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金属元素を使わないカーボン系材料のみの電子回路を開発 ―― 有機半導体技術により電子ゴミ問題解消に貢献 ――

Digital PR Platform / 2024年3月28日 11時8分

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発表のポイント:

金属元素不使用(メタルフリー)でありながら、室温大気下で安定に動作する、カーボン系材料のみで構成された相補型アナログ・デジタル回路を開発しました。
高いキャリア移動度を持つp型およびn型有機半導体の薄膜単結晶、それらに適した電極特性と回路パターニング可能なプロセス性を併せ持つ導電性カーボン、そして優れたプロセス耐性と絶縁性を有する高分子材料の組み合わせにより、有機トランジスタから成る本回路の作製に成功しました。
成果を電子タグやセンサデバイス等の電子デバイスへ展開することで、従来の電子ゴミ(e-waste)に関連する様々な問題の解消への貢献が期待できます。




[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2341/85677/500_441_202403271835126603e850e09f9.JPG


カーボン系材料のみで構成された相補型アナログ・デジタル回路のイメージ図

将来はディスポーザブルエレクトロニクスへの展開を見込む。



発表内容
 国立大学法人東京大学(以下「東京大学」)大学院新領域創成科学研究科の渡辺 和誉 特任助教、渡邉 峻一郎 准教授、竹谷 純一 教授と、日本電信電話株式会社(以下「NTT」)の研究チームは、パイクリスタル株式会社、国立大学法人東京工業大学とともに、金属元素を全く含まない、全てがカーボン系の材料から成る相補型(注1)集積回路を開発しました。この集積回路で構成されたアナログ・デジタル回路(注2)は室温大気下で安定に動作し、4-bit信号の出力デバイスとして動作させることに成功しました。
 近年の情報化社会の発展に伴い、使用済みの電子デバイスなどに起因する電子ゴミ(e-waste、注3)の増加が世界的な問題になっています。これらの電子ゴミには、重金属(鉛、水銀、カドミウムなど)や臭化物難燃材といった有害物質を含むものが多い上に、金や銀やプラチナなどの希少元素も含まれており、有効な処理・リサイクルが必要です。しかしながら、電子デバイスの需要はますます高まっており、電子ゴミに対するより根本的な対策が求められています。
 研究グループは、上記の問題の解決策としてディスポーザブルエレクトロニクス(注4)に着目しており、電子デバイスがリサイクルされずに自然環境下に廃棄された場合のために、2022年に有害物質を含まない電池と電子回路についての報告を行いました。今回は、更に検討を進め、限りある希少資源を使わないという考えにも着目し、金属元素を含まず、カーボン系材料のみで構成した電子回路を開発しました。本報告では、東京大学がカーボン系材料のみで構成した有機トランジスタやその相補型集積回路の作製技術を確立し、実働回路の製作にはNTTが有機トランジスタ向けに開発したプロセス依存性の少ない通信用回路構成技術を適用しました。
 従来から東京大学が取り組んでいたC9-DNBDT[1]とPhC2-BQQDI[2]は、印刷技術を応用して成膜可能かつ高いキャリア移動度(注5)を有する高性能なp型およびn型の有機半導体(注6)材料です。しかしながら、一般的な有機トランジスタ(注7)は、電極や絶縁層に金、銀、プラチナなどの貴金属や酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどの金属酸化物を使用する事が多く、依然として金属元素が含まれておりました。
 今回、研究グループは、有機トランジスタを駆動できるカーボン電極とそのパターニングプロセスを新たに開発し、ポリイミドフィルム基板とパリレン絶縁層という高分子材料と組み合わせることで、基板、絶縁層、半導体、電極、配線の全てがカーボン系材料から成る有機トランジスタ、およびその相補型回路の作製に成功しました(図1)。

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