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マイナス金利を撤廃したら、日銀は次にどんな施策を行う? そして金利への影響は?

Finasee / 2024年3月15日 7時0分

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Finasee(フィナシー)

 

ピムコジャパンリミテッド
エグゼクティブ・バイス・プレジデント
覚知 禎 氏

――世界各国で利下げ開始のタイミングが話題になる中、日本は金融緩和を維持しつつもYCCの修正を進めてきました。これまでの日銀の金融政策をどのように評価していますか。

2023年は新総裁となった植田和男氏が、黒田東彦前総裁から引き継いだ金融政策を着実に進めたフェーズだったと思います。具体的には7月にYCCを柔軟化し、10月にはYCCのターゲットである1%を「目処」として多少の上振れを容認するよう変更しました。日本の長期金利は足元で1%を大きく割り込んでいるため、事実上YCCは機能していない状態となっています。

これまでの植田日銀の金融政策を巡るポイントは2つあるでしょう。1つ目は、利回りの人為的なゆがみや日銀の国債保有額の増加など、マーケットにさまざまな「副作用」を及ぼし得るYCCを真っ先に形骸化させたことです。2つ目は、一連の施策を進める中でマーケットのボラティリティが必要以上に高まらないよう抑えた点です。いずれも非常にうまく立ち回ったと言えるのではないでしょうか。

また日銀が市場との対話をこれまで以上に重視するようになったと感じます。インタビューや公表資料などを通じて日銀の政策メンバーなどから発される情報の質が上がり、情報の受け手であるマーケット参加者がそれを市場に織り込みやすい環境になってきました。

以上のように、YCCの形骸化や市場との対話促進により、植田日銀はマーケットが機能しやすいプロセスを作りました。今後進めると見られる金融政策正常化への「布石」を打ったと言えるでしょう。

――正常化への「布石」を打った日銀は、24年はどのようなプロセスで進めていくでしょうか。

1月の日銀決定会合後のインタビューで植田総裁は、今後の動向を示唆する重要なポイントを挙げました。具体的には、①マイナス金利の解除はワンオフではなく正常化の一環として行う、②正常化は緩やかなプロセスとスピードで行う、の2点です。

植田総裁の示唆したポイントを踏まえると、大方のマーケット予想と同じく、春闘における賃金伸び率の上昇を前提として4月までにマイナス金利を撤廃すると思います。そしてマイナス金利撤廃後は、政策金利や無担保コールオーバーナイト物金利が若干プラスの水準で推移していくような形になるでしょう。

また形骸化したものの依然として残り続けているYCCや、物価上昇率が2%の目標値を超えるまで金融緩和を継続する「オーバーシュート型コミットメント」といった金融緩和政策に残された「宿題」についても、マイナス金利撤廃のタイミングで手を入れるのではないかと思います。長きにわたる金融緩和で膨らんだ国債買い入れ額の残高低減も目指すでしょう。

――日銀がシナリオ通りの政策修正を行うとすると、国内の金利水準はどの程度になると予想しますか。

日銀が政策修正に着手すれば、当然ながら金利は上昇圧力がかかりやすい局面になると思います。

とはいえ金利の上昇幅はある程度限られるでしょう。その要因としては、まずグローバル経済全体が失速しつつあることが挙げられます。また日銀が国債買い入れ額の低減に着手したとしても、これまで国債保有額を減らしてきた銀行セクターなど最終投資家の需要が戻ってくると見込まれることも、金利上昇圧力を一定程度削ぐ要因になると思います。具体的に予測するのは難しいですが、10年金利だと期待も込めて1.0%くらいに落ち着くのではないでしょうか。

――これまでと違う投資の機会は生まれそうですか。

金利がない世界からようやく脱却するわけですから、さまざまな面でマーケットが動いていく局面だと思います。

例えば債券であれば、ベース金利の上昇は資産クラスとしての投資妙味が増すことを意味します。10年金利がゼロだった数年前に比べると、現時点でも70bps前後まで上がっており、今後はさらに1%程度になるとの予測に立てば、キャリーという観点からも投資しやすい局面に入るでしょう。

また市場のボラティリティも高まりますので、債券に限らずさまざまな資産で投資機会が生まれると思います。

――日本経済の見通しはどんなイメージですか。

日本経済は停滞気味で、各種指標を分析すると特に家計の消費が弱いことがわかります。賃金の伸び率がインフレ対比で下回っており、実質賃金がかなりマイナスになっているのが主因でしょう。

もっとも実質賃金はこれからプラスに転じ、経済成長を下支えしていくと見られます。企業収益が絶好調かつ労働市場はタイトな状況となっており、企業から家計への分配が進みやすい環境が整っているためです。また、原材料や資源といったコストプッシュ型のインフレ要因は少しずつ解消していく見通しですから、物価の伸びを賃金の上昇で吸収できるようになり、実質賃金が上がりやすい環境になると思います。

――最後に、2024年の日本のマーケット動向を見据え、投資家がチェックしておくべきリスク要因についてお聞かせください。

先述のように賃金が上がることはほぼ確実ですが、それが物価に波及し続けていくのかを注視したいところです。物価とともに賃金も上がり、金利のみならず株価の上昇も見込めるわけですから、さまざまな資産クラスへのインプリケーションが極めて高い判断材料になるでしょう。

オルイン編集部

「オルイン」は、株式・債券といった伝統資産はもちろん、ヘッジファンドやプライベートエクイティ、不動産といったオルタナティブもカバーする、国内随一の機関投資家向け「運用情報誌」。2006年の創刊以来、日本の年金基金や金融法人、公益法人といった機関投資家の運用プロフェッショナルに対し、その時々のタイムリーな話題を客観的かつ独自の視点でわかりやすくお伝えしています。

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