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コンセプチュアル思考〈第8回〉 「私は何を売る職業人か」で自分を定義する/村山 昇

INSIGHT NOW! / 2016年4月20日 22時10分

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村山 昇 / キャリア・ポートレート コンサルティング

本連載は今回からPARTⅡ「実践ワーク編」に移ります。コンセプチュアル思考を使って、仕事・キャリアに軸と力を与える演習をしていきます。

さて、コンセプチュアル思考の基本的技術は次の5つです。

 〈1〉定義化  物事の本質をつかみ言葉で表わす
 〈2〉モデル化  物事の仕組みを単純化して図に表わす
 〈3〉類推  物事の核心をとらえ他に適用する
 〈4〉精錬  物事のとらえ方をしなやかに鋭く
 〈5〉意味化  物事から意味を見出す/意味を共有できる形として描く

今回はその1番目にある「定義化」のワークを紹介します。職業人としての自分をどう定義するか、がテーマです。


◆提供価値で自分を定義する

「人は何かを売って生きている」―――単純な言い回しですが、この一文には味わい深いものがあります。そこで、質問です。あなたは「何を売っている職業人」でしょうか?

 「私は自動車販売会社に勤めていて〈クルマ〉を売っています」
 「私はシステムエンジニアをしていて〈情報システム〉を売っています」
 「私はシティホテルで働いていて〈接客サービス〉を売っています」

このように、職業人として自分は何者であるのかを定義するのに、売っているもので表現することはだれでも簡単にできます。即物的に製品・サービスを言えばいいだけですから。

これに対し、コンセプチュアル思考では考える角度が違います。私が行なっている研修では下図のようなシートを使って問いを立てます。



この演習のポイントは、「提供価値」によって、自分のやっている仕事は何なのか、自分は職業人として何者でありたいのかを定義することにあります。

ここでは、自分は自動車販売会社に勤めているから、「私は〈クルマ〉を売っています」とか、自分はホテルで働いているから「私は〈接客サービス〉を売っています」といった答えを求めていません。そうした外側から見るだけの言葉をはめる定義では、本質的なことは何も見えてきません。この空欄を埋めるには、抽象度を上げて自分が何者であるかの本質に迫っていかねばなりません。

つまり、私たち一人ひとりの働き手は、目に見える具体的なモノやサービスを売っているわけですが、もっと根本を考えると、そのモノやサービスの核にある価値を売っています。

たとえば、保険の営業マンは、根本的には「万が一のときの経済的リスクの回避」を売っているといえます。また、新薬の研究開発者であれば、「その病気のない世界」を売っている。財務担当者は「数値による企業の健康診断書」を売っているのかもしれません。そのほか、プロスポーツ選手は「感動と勇気」「筋書きのないドラマ」を届ける職業人でしょう。コンサルタントは「知恵や解決」を届けています。レストランの料理人は、料理を売っているのではなく、「舌鼓を打つ幸福の時間」を売っているととらえられないでしょうか。コメ作り農家は「生命の素」を届ける職業人です。

たとえば、私はいま、企業に研修サービスを売ることを生業としていますが、自分を研修屋だとは定義しません。仕事の提供価値によって、自身を次のように定義しています。

 ・「私は仕事を通し〈向上意欲を刺激する学びの場〉を売っています」。
 ・「私は仕事を通し〈仕事とは何か? に対し目の前がパッと明るくなる理解〉
   を売っています」。
 ・「私はお客様に〈働くことに対する光と力〉を届ける職業人でありたい」。


◆提供価値という目的のもとに自由になる

私にとって研修サービスの実施は一つの手段にすぎません。上のような価値を提供するために、時には自己啓発の本を書くでしょうし、この記事のように概念工作家としてネット上に連載をすることもあります。「仕事とは何か」をわかりやすく理解させるためなら、マンガや小説を書いたっていいと思っています。

また事業形態にしても、個人事業でやる方法もあれば、株式会社でやる方法もあります。場合によってはNPOでやってもいいでしょう。ともかく、私が自身の仕事に対して与える最も重要な洞察は、いかに〈仕事とは何か?に対し目の前がパッと明るくなる理解〉を売る優れたプロフェッショナルになるかです。この意志的に抽象化された目的の下に、私は自由です。手段や方法はいくらでもあり、それを体現する働きざまや生きざまも固定して考える必要はありません。

コンセプチュアルに考える力を使って、自分という職業人の存在意義を提供価値で定義してみる。それは、「自分は何者である(ありたい)のか」「丸ごとの自分を使って何の価値を世に届けたいのか」を自問する作業になります。コンセプチュアル思考が「知・情・意」のうちの「意の思考」と呼ぶのはそういうところからです。


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