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平成の大合併の失敗を教訓に

Japan In-depth / 2019年12月16日 18時0分

平成の大合併の失敗を教訓に


出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)


【まとめ】


・日弁連「平成の大合併」は失敗と発表。


・合併特例債使用した丹波篠山市、人口は減少、借金は増大。


・「令和の大合併」、平成の手法繰り返すな。


 


「平成の大合併」は結局、失敗だった。日本弁護士連合会が、そんな趣旨の調査結果を発表し、話題となっている。


調査は、合併した人口4000人未満の旧町村と、合併せず、存続を選んだ近隣の町村比べたものだ。合併した方が、合併しなかったところより、人口が減り、高齢化も進んだ。調査対象のうち、およそ9割で同じ傾向だったという。


政府は1999年からおよそ10年間、「平成の大合併」を強力に主導したが、調査結果を見る限り、合併はマイナスだったになる。役場機能が縮小し、地元の商店なども売り上げ不振に陥ったという。


私はこの調査結果に驚き、ある事務次官経験者に話を聞いた。その経験者は「『平成の大合併』については、反対していたが、当時の政治と世論が許さなかった。国があおったといわれても仕方ない」と後悔の念をにじませた。


「平成の大合併」は、国主導で進められた。その論理はシンプルだ。少子化が進む今、小さな市町村は、合併しなければ、生き残りはできない。危機感をあおった。


そのために何をしたのか。国は「ニンジン」をぶら下げた。そのニンジンとは、合併した自治体だけが使える合併特例債である。市町村が新たに借金するとき、その7割までを国が負担する制度だ。市町村にとってかなり「お得」と見えた。ハコモノをつくるのは「今でしょう」となった。


「つくらなければ損」。そんな時代の先頭を走る自治体がある。兵庫県丹波篠山市(旧篠山市)である。4つの町が合併して誕生したが、合併特例債をフルにつかって、次々にハコモノを建てた。「平成の大合併の優等生」として、全国から視察が相次いだ。


「4つの町では長年、合併が話題となったが、なかなか難しかった。合併の条件として、斎場などの懸案の事業を実施した。合併特例債をつかったものだ」(丹波篠山市関係者)


最大の目玉は、当時4つの町が共同利用していた斎場やゴミ焼却場の建て替えだった。老朽化していたため、合併特例債はうってつけの建て替えの財源となった。さらに、市民センター、温泉施設、図書館、温水プール付きの運動公園、博物館など次々につくった。


合併特例債を財源にした真新しい建物がずらりと建った。一つ一つの施設がぜいたく三昧。「合併バブル」で、まちは、潤ったように見えた。将来、人口が増えるという甘い見通しがあった。税収アップも期待できる。


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