大林監督作品と方言の話 家にいるなら邦画を見よう 2
Japan In-depth / 2020年4月13日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・1960年代の香川県・観音寺を舞台にした『青春デンデケデケデケ』がおすすめ。
・同じ香川県内でも、地域によって方言が異なる。
・岸部一徳の存在感と垣間見える健康的なエロティシズムが魅力。
なんの因果か、このシリーズを立ち上げてほどなく、大林宣彦監督の訃報に接することとなった。新型コロナとは関わりはないが、肺ガンを患っており、報道によれば「余命3カ月」を宣告されてから3年半余り生きて、最後の作品も撮り終えていたという。
稲垣吾郎や常盤貴子が出演する『海辺の映画館 キネマの玉手箱』という作品は、奇しくも監督が亡くなった4月10日、公開予定であった。新型コロナが監督の命を奪ったわけではないけれども、映画公開は延期となり、いわば遺作を見る機会を奪ってはいる。あらためて言うことでもないが、1日も早い終息を!
おそらく、TVでも『金曜ロードショー』あたりで、追悼特集が放送されるだろう。
大林監督の代表作と言うと、出身地である広島県・尾道を舞台とした『転校生』(1982年)、『時をかける少女』(1983年)、『さびしんぼう』(1985年)の「尾道三部作」を挙げる人が多いのだが、私が一番好きなのは『青春デンデケデケデケ』(1992年)である。
1960年代の香川県・観音寺を舞台に、ロックバンドの活動に熱中する高校生たちの物語で、芦原すなお氏の自伝的小説が原作となっている。ちなみにこの作品で、氏は直木賞を受賞している(1992年・第105回)。
▲写真:観音寺市 高屋神社からの展望 出典:Wikimedia Commons
このため、前出の尾道三部作ともやや違って、方言が正面に押し出されているのだが、私にはいささか違和感があって、そこが逆に面白かった。
実は私は、総本山少林寺で修行すべく、香川県の多度津というところに住んだことがある。つまり、讃岐弁ならば耳慣れている。ところが映画の中で、
「弁当用意してつか」「泳ぎ教えてつか」
などと「〜して頂戴」という意味で「〜してつか」と盛んに使われている方言が、(多度津では聞いたことがないなあ)という具合だったのだ。
念のため多度津のジモティに聞いてみたところ、
「理由は分からないけど、たしかにここいら(多度津)では使わない」
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