米地銀NYCB、投資会社などから10億ドル超の出資受けると発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月14日 0時55分
米国の地銀ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)は3月7日、スティーブン・ムニューシン元財務長官が経営するリバティ・ストラテジック・キャピタルと、ハドソン・ベイ・キャピタル、リベレンス・キャピタル・パートナーズなどから10億ドル超の出資を受けると発表した。
10億ドルの内訳は、リバティ4億5,000万ドル、ハドソン・ベイ2億5,000万ドル、リベレンス社2億ドル、シタデル・グローバル・エクイティーをはじめとするその他の投資会社から1億ドルとなる。必要な手続きを経て3月11日に出資が完了した。これに伴い、経営陣も刷新が図られ、最高経営責任者(CEO)に元通貨監督官のジョセフ・オッティング氏が就任するほか、今回出資したリバティのムニューシン元財務長官、リベレンスのマネジングパートナーのミルトン・ベルリンスキー氏、ハドソン・ベイの推薦を受けたアレン・プワルスキー氏の3人が新たに取締役に加わる。
今回の出資について、ムニューシン元財務長官は「NYCBへの10億ドルを超える資本投下により、引当金の積み増しが将来に必要となった場合でも、大手銀行と同等以上の(インタレスト・)カバレッジ・レシオ(注1)を確保するのに十分な資本を有することとなった」と述べた。
今回の増資発表を受け、3月1日にNYCBの長期発行債格付けの引き下げを行い(2024年3月6日記事参照)、さらなる格下げの可能性を示唆していた大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズは同日、今後の見通しについて「格下げ検討」から「格上げ検討」に変更した。今回の増資により、自己資本比率の中でも特に重視される普通株式などからなるティア1(CET1、注2)比率が上昇し、同社の信用力を向上させる可能性があることが理由。他方、NYCBは大手銀行と比較して商業用不動産向け融資の割合が高く、単純に大手銀行と比較するのは適切でないとし、NYCBが引当金をさらに増やす必要があるかといった観点や、年次財務報告書が期限内に提出されるかどうかといった点などを注視していくとした。
今後の格上げについては、(1)増資が無事に完了し、適切な引当金を維持しながら自己資本比率を一定以上維持できると判断した場合、(2)年次財務報告書が期限内に提出され、これに関する監査意見書を受け取った場合、(3)市場からの資金調達を大幅に削減、流動性を強化、資本をさらに増強、商業用不動産への集中を減らし、ガバナンス、監視、リスク管理、内部統制が持続的に改善した場合などのタイミングで行われる可能性が高いとした。
(注1)会社の利息支払い能力を測定するための指標。年間の事業利益が金融費用の何倍かを示している。
(注2)銀行の自己資本のうち、内部留保で構成される部分。
(加藤翔一)
(米国)
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