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人工知能の次に社会に変化を与えるもの

プレジデントオンライン / 2017年11月13日 9時15分

アポロ計画は1961年から72年にかけて実施され、全6回の有人月面着陸に成功。(写真=NASA/The New York Times/アフロ)

■経費だけで2人100億円

このところ、国内はもとより、お隣の韓国、アメリカ、そしてヨーロッパなど、世界各地から次々とニュースが飛び込んでくる。ついていくのも大変だが、後から見ると、これらのニュースはあまり意味がなかった、ということになるかもしれない。

人間は長期的な見通しを立てるのが苦手である。脳の最も重要な働きの一つは未来を予測することだが、ほんの少し先は予測できても、長期的なことはなかなか見通せない。

昨今は誰もが「人工知能」のことを話題にする。しかし、研究者たちは人間の知性の解明とその人工的再現に長い間取り組んできたし、その成果が今になって「目立つ」ものになってきたにすぎない。

報じられているニュースの中で、次の時代に大きな変化を起こすものがあるかもしれない。「人工知能」のように社会にインパクトをもたらす潮流は何か? その一つは、間違いなく「宇宙」だろう。

ペイパル、テスラ・モーターズ、ハイパーループなど、時代を切り開く事業、プロジェクトの数々に関わってきた世界的な起業家イーロン・マスク氏。そのマスク氏が率いる「スペースX」が、先日、画期的な計画を発表した。2018年に、民間人2人が月を周回して帰ってくる、宇宙旅行を実施するというのである。旅行者が誰かはまだ公表されていないが、今後、健康状態のチェックなどを経て名前が明らかにされるという。

地球から月に向かい、一周して戻ってくるまで、ほぼ1週間の旅行。宇宙船に乗り込むのは2人の旅客だけで、運航は無人で行われるそうだ。

巨大プロジェクトだけに、経費だけで2人100億円はかかる。2人の民間人は、すでに、かなりの額の手付金を支払い済みだということだが、誰でもできる旅行ではない。

ヴァージン・ギャラクティックによる、高度100キロメートル以上での数分間の無重力状態を経験できる宇宙旅行の計画も進行中で、費用は約2800万円。短い時間のようだが、浮遊感を楽しむには十分だし、長いとかえって宇宙酔いになるという。

■宇宙進出で人類の意識も変化する

本格的な宇宙旅行時代の到来。もちろん、かかる費用はそれこそ「天文学的」で、誰もが出かけられるわけではないが、人類社会に与えるインパクトは絶大だろう。

一つは、宇宙空間の利用、宇宙を利用した技術開発の定着とすそ野の広がり。民間の参入は、宇宙開発コストを劇的に下げる。スペースXの月周回旅行で民間人が払う旅費は、国際宇宙ステーションへの人員や物資の輸送コストを減らす効果があるという。

そして見逃せないのが、宇宙に人類が進出することによる、意識の変化である。

アポロ計画の宇宙飛行士の多くが「神」の存在を感じたり、地球のかけがえのなさに気づいたと報告をしたように、宇宙に行くことによって人類の感覚は劇的に変化することが知られている。

ロシアには、伝統的に、人類は宇宙に行くことによって次の段階に進化するという考え方があり、それが、旧ソ連の初期の宇宙開発プログラムを推進する力になったという。

今までごく一部しか行けなかった宇宙を多くが経験することで、人間の脳にどのような変化が起こるのか。

地球上の社会、文化に対する宇宙の影響は、これから本格化する。民間宇宙旅行の始動は、人工知能と並んで次の数年間の最も大きなトピックであることは間違いない。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=NASA/The New York Times/アフロ)

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