子供が大きくなるに連れて「今日あったこと」を親に話さなくなる本当の原因
プレジデントオンライン / 2021年7月21日 15時15分
※本稿は、坪田信貴『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■課題を知らないまま「頑張れ」と言うのは逆効果
「勉強しなさい」は、具体的に何をしたらいいかわかっていない人の言葉です。
よくわからないけれど「とりあえず頑張れ」と言っているだけ。「人生、頑張れ」と言っているようなもので、何を頑張ったらいいのかはよくわかりません。
たとえば子育ての奮闘中に、単身赴任の夫が帰ってきて、奥さんが子育ての苦労を話したとします。そのとき、夫がいかにも何もわかってなさそうなのに「とりあえず子育て頑張れ」と言ってきたら「なんだこいつ」と思いませんか?
課題は何か、どういう方向に頑張ったらいいのかといったことを把握していないばかりか、知ろうともしない人にざっくり「頑張れ」と言われても、「うるさいな」と思いますよね。それと同じです。課題を知らないまま「頑張れ」と言うのは逆効果なのです。
勉強で苦手な分野があって、もうちょっと頑張りたいというとき、大切なのは本当の課題を見つけることです。
僕の塾に来る方の中で多いのは、「数学が苦手です」と言っているようなケースです。親御さんも「この子は本当に数学が苦手なんです。だからなんとかしたいと思って……」とおっしゃいます。
そこで、どのくらい苦手で、どこまで戻ってやる必要があるのか調べるために学力テストのようなものをやります。すると、9割の人は「数学が苦手なのではなく、計算が苦手」ということがわかるのです。
■会話は「今日はどんな宿題が出たの?」から始まる
だから僕は「あなたの課題は、数学の中の理論的な部分ではなく、計算の練習です。足し算、引き算、掛け算、割り算、分数の計算を徹底的に2週間くらい練習すれば数学も得意になりますよ」と話します。
多くの人は「数学が苦手」というように問題をざっくりととらえすぎています。本当の課題がわかっていないので、頑張れません。
「本を読むのが苦手」というのもそうです。「本」と言ってもいろいろありますよね。
小説を読むのは苦手だけど、実用書は読めるとか図鑑は好きという場合もあります。
文章を追うのに必死でイメージするのが苦手な場合、絵本を読んでみたり、読み聞かせをしてもらうことで得意になることもあります。こんなふうに、少し細かく見ていけば、どこが苦手なのかわかるはずです。
ですから課題がわからないまま、とりあえず「勉強しなさい」ではなく、課題を見つけて「この計算、練習してみない?」「絵本を読んでみない?」というように具体的な提案をしてみましょう。
宿題であれば、「今日はどんな宿題が出たの?」と聞くところからです。本人もあまりよくわかっていないことが多いので、「今日はどこをやったの?」とか「宿題のページ見せてよ」と言って、最初の2~3分で課題の確認をします。
宿題、勉強に限らず、「本人が課題に気づいていること」が成長に欠かせません。
親や周りの大人ができることは、そのための質問を投げかけること。課題が具体的になったら、その子に合った提案をすることです。
■「宿題くらいやりなさい」といっても宿題はしてくれない
「宿題くらいやりなさい」「学校くらい行きなさい」という声かけもありがちですが、これは明らかにうまくいきません。
なぜかというと、「宿題くらい」という言い方には、そもそも「宿題」に価値を置いていないことが表れているからです。宿題をやったところでたいした価値はないけれど、そのくらいやっておけよと言っているのです。
「これはクソゲー(つまらないゲーム、時間をむだにするようなゲーム)だけどやれ」と言われているようなもの。やっても価値のないことをやれと言われて、誰がやる気になるでしょうか?
それに、この言い方は典型的なマウンティングでもあって、自分を優位にしています。「学校ぐらい行きなさい」の言葉のウラには、「私はとっくに学校は卒業したけどね! 私はもっとずっと高度なことやっているけどね!」というのが見えるのです。
そして、「お前はダメだ」と伝えているのです。
「漢字くらい書けて当たり前なんだから、練習しなさい」といった声かけも同じです。「○○ぐらいやれ」という言葉は、言うほどにやらなくなります。
それなら普通に「宿題やりなさい」と言ったほうがマシです。子どもが頑張る気持ちになれるのは、宿題をやることに価値を感じられたときです。
「こんなむずかしそうな宿題をやれるなんてすごいね」「お母さんはよく宿題忘れたものだけど、ちゃんと宿題やろうとしているなんてえらいなあ」なんて言うほうが、やる気になりますよ。
■「100点のテストは最悪!?」点数より大事なことは“子の気持ち”
学習の面で言うと、テストの点が悪かったときはチャンスです。
復習して学力を伸ばすことができます。そういう意味では100点のテストは最悪。100点だったら「やったー!」で終わりです。たまたま勉強した範囲が出ただけかもしれないけれど、安心してもうやらなくなってしまう。
一方、たまたま知らないところばかり出て0点になってしまったら、そこを勉強すればいいとわかります。
ですから、お子さんのテストの点数によって頭ごなしに叱ったりするのではなく、そこから学べることを一緒に見つけていく姿勢が大切です。
僕は生徒が学校のテスト結果を見せに来たら、基本的にまず「どう思っているの?」と聞きます。たとえば75点のテストを見せられて、「おお、すごいじゃん」と思う人もいれば「もうちょっと頑張らないとね」と思う人もいますよね。
でも、これはすべて主観でしかありません。テスト結果を見せられた側の評価は関係ない。どうでもいいのです。だから、本人がどう思っているのか聞きます。
すると、たとえば「すごく嬉しかった。今回のテストはすごくむずかしくて平均点が30点だった。70点以上とれたのは私だけで、先生もほめてくれたんだ」といった話が出てきます。逆に、「クラスで一番点数はよかったけれど、それでも悔しかったと言う子もいるでしょう。本当にいろいろなパターンがあります。
本人の感想を聞いたら「よかったね、嬉しかったね」とか「悔しかったね」と共感します。極端な話、それだけでいいのです。本人が成功だとか失敗だとか思っていることに対して共感を示せば、自然に頑張ろうと思うものです。
■無意識な「子へのダメ出し」には要注意
「共感」はとても大切です。
共感しながら話を聞いていれば、子どもはなんでも話してくれるようになります。
小さいうちはみんな、今日あったことや思ったことなどなんでも親に話しますよね。
「今日ね、幼稚園の門のところにブーンって虫が来てね、先生がきゃあって驚いてね、でも僕は全然驚かなくて、ああ、これはカナブンだよって教えてあげたの。そうしたら先生が……」などなど、毎日のように「聞いて聞いて」と一生懸命話をしてくれます。
でも、年齢が上がるにつれ、あまり話さなくなっていきます。それは自然なことでもあるのですが、多くの場合、共感よりダメ出しが多いから話さなくなるのです。
「先生に教えてあげられてよかったね。誇らしかったね」と共感するのでなく「えー、いやだ。また虫?」とか「それより、ちゃんと先生にあいさつできたの?」などと言っていると、子どもは「どうせわかってもらえない」と感じるようになります。
わかってもらえないどころか、ダメ出しです。ダメ出しされないためには、情報をあまり出さないほうがいい。だから話さなくなるのです。
大人だってそうですよね。共感してもらいたくて話しているのに、「こういうところがダメなんだよ」と言われたら二度と話すもんかと思うのではないでしょうか。
■平均点にこだわらず、「共感」で子どもを伸ばそう
ちなみに、テストの点数についていえば「平均点」に皆さんこだわりがちです。
「クラスで1位になりたい」はわかるのですが、「せめて平均点をとれるようにしたい」というのは、どういうことでしょうか。学校の1クラスなんて多くて40人くらいでしょう。その中での平均点なんて、統計的に意味をなしませんよね。さらに全部平均点以上とれても「器用貧乏」と言われたりします。
「平均点」にこだわらず、子どもの思いに共感しながら、伸ばしていけばよいでしょう。
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坪田塾塾長
心理学を駆使した学習法により、これまでに1300人以上の子どもたちの「子別指導」を実践。起業家としての顔も持つ。テレビやラジオ、講演会でも活動中。企業のマネージャー研修、新人研修を行うほか、現在は吉本興業ホールディングスの社外取締役も勤める。著書に『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』のほか、『人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書』『バクノビ 子どもの底力を圧倒的に引き出す339の言葉』など多数。
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(坪田塾塾長 坪田 信貴)
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