「昔は健常者のふりをしていた」聴覚障がい、トゥレット症ーー障がい当事者の“不自由な日常”を世間に発信し続けるワケ
日刊SPA! / 2025年1月11日 15時50分
酒井:同じイントネーションの別の言葉に置き換えて教えてくれたんですね。
うさぎ:そうなんです。そんな感じで、両親にはいろいろ教えてもらいました。
酒井:うちの家族は僕のことをすごく思ってくれるのですが、病気が発症した当時は、母親との関係が少し大変でした。僕の声が大きいから、母は耳が痛くなっちゃうんです。
うさぎ:それは大変でしたね。私だったら聞こえないから大丈夫(笑)。
酒井:確かに! 相性がいいかもしれないですね(笑)。高校までは実家にいたので、それまでは母といつもケンカしていました。僕が2階で大きい声を出しながら宿題やゲームをやっていると、母がすぐに階段を駆け上がってきて「うるさい!」と。
大学生になって一人暮らしをするようになってから適切な距離をとれるようになり、今ではめちゃくちゃ仲良しです。家族は一緒にいるべきという考え方もありますが、この病気に限っては、離れたいと思ったらすぐに離れるべきだと思いますね。
◆昔は“健常者のふり”をしてしまっていた
――幼少の頃につらいことはありましたか?
うさぎ:私は相手の口の動きを見て話を聞いているので、大人数の人が一気にしゃべると読み取るのが間に合わなくなります。人とコミュニケーションをとるのが好きなのに、会話の中に入れなかったことがつらかったですね。
酒井:僕は、いちばん仲がいいと思っていた友達が、病気への理解がいちばんなかったことがすごくつらかったです。ここ2~3年でトゥレット症の認知は広まりましましたが、当時は誰も知らないから、「なんだよ、お前。それ、“うんうん”障がい病かよ」などと笑われたりしました。
自分が周りの人とは違うんだというショックは、とても大きかったですね。今は全然大丈夫ですが、当時は明るい性格じゃなかったので……。うさぎさんは、昔から明るかったですか?
うさぎ:好奇心がとても旺盛だったんですけど、大人数の中に入ることにはネガティブでした。今はスマホのアプリもありコミュニケーションがとりやすくなりましたが、昔は聞こえていないことをあえて言わず、健聴者のふりをしていました。学校のみんなが知っているのにジロジロ見られるのが嫌で、補聴器も隠していました。
酒井:同じですね。昔のほうが体が動くことは少なかったので、「なんかそわそわしている人」みたいな感じで、健常者と同じように振る舞っていました。でも、なにかのタイミングで吹っ切れるようになるんですよね。
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