台湾総選挙・支持者獲得では「空中作戦」も発生 台湾選挙のリアル②・既存の選挙戦に自信がない政党
東洋経済オンライン / 2024年1月11日 15時0分
実は、これを心配する声がなくはない。集会に集まった人たちが実際にその候補に投票するのか、そしてデジタル的なアプローチが民衆党の弱点である50代以上の有権者をつかめないのではないか、といった不安だ。
前出の許氏は「これまで、台湾の若者層の投票率は低かった。彼らをどう投票所に向かわせるか。誰もが悩んでいる」という。
だが、「われわれは逆に見ている。集会には多くの人が来てくれた。その集会の熱気を、実際に参加した人たちがネットで知人・友人に『自分たちも行ってきたからわかる。すごい雰囲気だから一度行ってみる価値があるよ』と紹介している。だからこそ、われわれの集会が最近になって参加者が増え、ネットでの閲覧数とともに増加している」と期待する。
中高年層の支持をどう得るか。そこで民衆党は「55孫子の兵法」という戦略を実行に移している。若い支持者を動員して、毎日5分、毎週5回は自宅にいる祖父母にオフ・オンラインで会って「総統は柯文哲、立法院では民衆党」と説得する作戦だ。
「中高年層は政治になると、いわゆるエコー・チェンバー、すなわち理念が自分と近い者同士が集まりがちだ。われわれからいくら自分たちの候補をアピールしてもあまり浸透しない。多くの人がSNSを利用しているが、アルゴリズムが機能し自分と違う立場の人と接する機会がない。だからこそ、当事者と直接接触して対話を試みることで効果が出せる」という。
想定以上の多くの人を集会に集めている民衆党とその支持者たちは、「参加者が本当に多い。投票日当日にはかなり票を集められるのではないか」と期待を寄せる。
有権者は柯文哲のことを「阿伯」(台湾語で「おじさん」)と呼ぶ。柯文哲も「君たちが放棄しなければ、阿伯も最後までやりぬく」としばしば口にする。優勢を保つ「空中作戦」と若者層の支持を武器に、第3勢力が総統という座に挑む。
民進党の強力地盤に挑む国民党
「地方を変えたいなら、立法院では若い候補者に投票してください!」
1月6日、台中市第7選挙区(大里、太平地区)。ここで国民党から出馬した林家興が、トラックに乗って市場や通りを遊説している。彼にとっては初めての政界挑戦だ。
対抗馬は、市議3期、立法委員3期を務め、今回4期目を狙う民進党候補・何欣純。何欣純は前回の選挙で全国最多投票を獲得して当選した。
一方の林家興は、国民党の青年団長から現在は同党報道官を務め、全国的に知名度がある。若い候補者を登場させて、国民党はこれまで民進党が掌握してきた第7選挙区で新たな突破口を開きたいと考えている。
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