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テレワーク制限を始めた巨大IT企業という「逆説」 「SNSで歪んだ自由民主主義」を救うのは何か

東洋経済オンライン / 2024年3月18日 9時0分

なぜこんなにも政治とSNSの相性は悪いのでしょうか(写真:タカス/PIXTA)

本来であれば格差問題の解決に取り組むべきリベラルが、なぜ「新自由主義」を利するような「脱成長」論の罠にはまるのか。自由主義の旗手アメリカは、覇権の衰えとともにどこに向かうのか。グローバリズムとナショナリズムのあるべきバランスはどのようなものか。「令和の新教養」シリーズなどを大幅加筆し、2020年代の重要テーマを論じた『新自由主義と脱成長をもうやめる』が、このほど上梓された。同書の筆者でもある中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、古川雄嗣(北海道教育大学旭川校准教授)の各氏が、「社会的な合意形成」と「自由民主主義」について論じた座談会の最終回をお届けする(第1回はこちら、第2回はこちら、全3回)。

デイヴィッド・ボウイが予言した「宇宙生物」

中野:バーバラ・ウォルターが著書『アメリカは内戦に向かうのか』で、アメリカの政治がSNSのせいでおかしくなっていると書いていましたが、日本の政治も同じような感じかもしれない。陰謀説が流行るのも、SNSで情報があふれて人の処理能力を超えちゃっているから、簡単な答えに飛びついてしまう。

テレビや新聞も大概だけれど、SNSの影響はもっと深刻かもしれない。SNSという、認知資本主義のいちばん先鋭化した形態が来ちゃったなって感じがする。

佐藤:SNSというか、インターネットのヤバさを最初にずばり指摘したのは、私の知るかぎり、ロック・ミュージシャンのデイヴィッド・ボウイです。1999年の時点で、こんな趣旨の発言をしたんですよ。「ネットはただのツールだって? まさか。あれは宇宙生物だ。とうとう地球にたどりついたのさ! 興奮させられるが、恐ろしいことも起こる気がする。情報の送り手と受け手が一体化して共鳴したあげく、メディアに関する通念を完全に吹っ飛ばすだろう」。そして、実際にそうなった。

ネットはさしずめ、われわれの頭に接続できる巨大な外付けハードディスクです。20世紀末、人類は自分の脳を拡張する手段を手に入れた。ボウイ風に言えば、宇宙から飛来して地上を覆いつくした脳の化け物との共生が始まったのです。これが情報の検索速度と、処理速度をどんどん上げていった。

ところがこの宇宙脳、ひたすら効率に固執するうえ、自己と他者の境界が曖昧。誰の頭とも接続可能なのだから当然ですが、そうなると「他者と時間をかけて議論する」ことに意義を見出すはずもなく、「『合意形成など不要だ』と合意することが、最も効率的な意思決定の方法だ」という結論に達する。むろん、独裁と民主主義の区別もつけない。こうして自由民主主義は消滅し、世界の効率化が完成に向かう。

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