経営者だからこそ感じる「労働組合」の重要性 データ重視で失われた「対話」の共同体を求めて
東洋経済オンライン / 2024年3月18日 10時30分
グローバル化の問題点は「新しい階級闘争」を生み出した。新自由主義改革がもたらした経済格差の拡大、政治的な国民の分断などである。アメリカの政治学者マイケル・リンド氏は、邦訳された『新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る』において、各国でグローバル企業や投資家(オーバークラス)と庶民層の間で政治的影響力の差が生じてしまったことがその要因だと指摘している。私たちはこの状況をいかに読み解くべきか。NPO法人を運営する今井紀明氏と、人文系私設図書館を運営する青木真兵氏が「対話」と「中間団体」の視点から語る。
データ重視で失われた「対話」の機会
今井:『新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る』を読んで最初に思ったことは、経営者などのエリートと呼ばれる人たちと労働者の大きな分断をどうつなぎ直せばいいのかということです。
20世紀中盤、労働者と経営者が対話することで福祉制度をつくってきました。それが今分離してしまっている。経営者は労働者や立場的に弱い状況に追い込まれている人といかに対話していくのかは考えさせられました。
僕自身、自分が代表を務める認定NPO法人D×Pでは10代の孤立を解決するために動いていますが、子どもたちや若者たちと関わる必要性は常に感じています。1万人以上が登録しているユキサキチャットというオンライン相談サービスや、大阪の繁華街に開設したユースセンターの中で、若者たちと積極的に関わっていきたいと強く思っています。
一方で経営者にはグローバルな情報が入ってくることで、そこにリソースを取られてしまい、結果的に労働者と分断が起こりやすくなってきているように思います。
本書で言うところの管理者(経営者)エリートたちは、情報でみる世論を聞こうとはしますが労働者たちや弱い状況に追い込まれている人にリアルに関わりを持とうとしたり、データではなく直接会って話を聞いていったりしているのかなと疑問を持ちました。ますます労働者たちや弱い状況に追い込まれている人の声を聞いて、対話できるようにしていかなければいけないと思いました。
青木:その背景には、新自由主義的価値観を内面化した自己実現/自己責任論があると思っています。勝負に負けたら自己責任だし、勝ったら総取りみたいな、すごく個人主義的な価値観です。そのせいで労働者側も、悪い意味で経営者側のロジックで考えてしまって、労働組合も成立しなくなった。個人化が進み、横の紐帯がどんどんなくなっているんですよね。それが労働者側の問題の一つではある。
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