タクシー業界が「ライドシェア」の全面導入を認めるのは、いつになる?
財経新聞 / 2024年2月28日 18時33分
どんな商売も競争相手が少ないほど旨みが大きい。
最も明快に想像できるのは、新しい事業の創始者になることだ。事業分野に新規性や意外性が高く、競合相手が参入しにくい障壁があることが望ましい。
現実的にはそんな事業はほとんどないと言った方がいいから、今まで数多くのチャレンジャーが試行錯誤を繰り返して、大部分が消えて行った。
遅々として進まない「ライドシェア」問題を、そんな目線で考えると分かりやすい。タクシー事業者にとって、利便性が高くて割安な競争相手の出現など容認できない。
拡大するタクシーの需要に、タクシー業界が対応できていないというのは周知のことだ。数年続いたコロナ禍で、不要不急の外出を控える人が多くなったから、売上の低迷が給料の減少となりドミノのように離職するドライバーが続いた。
コロナ禍が収まった時には、人手不足が進行して雇用環境が逼迫するという事態が表面化した。以前から高齢化が進み、特別魅力的な職場とは言えないタクシー業界が、需要に見合ったドライバーを確保することができないことは不本意だろうが現実だ。
地域を問わず、タクシー乗り場では「客待ちをするタクシー」ではなく、「タクシー待ちをする利用者」の長い列が珍しくない。流しのタクシーを見かけなくなったのも、気のせいではないようだ。
若い人や健康な人達は、自分の努力次第で移動目的が達成できるかもしれないが、高齢者や体調の思わしくない人など、移動のハードルが高すぎる人達には深刻な状況である。
そんな時に海外の事例を参考にして臨機応変に対応することは当然の話だが、日本では本格的なライドシェアは中々進まない。
最大のネックは、タクシー業界がこぞって反対していることに尽きる。もちろん、「事件や事故が起きたらどうする」と危機感を煽り立てる感情論も、「2種免許を持たなくても顧客を運べるのか」という原則論も建前としては手強いが、本音が「自らの事業基盤を失いたくない」という既得権益の維持にあることは明白だ。
20日に超党派の国会議員が「ライドシェア」の勉強会を開催した。とりあえず、骨抜きのような「日本版ライドシェア」をスタートさせて、その後に本格派への道筋を探る作戦だ。
21日には河野太郎デジタル相が規制改革推進会議の作業部会で、移動手段が貧弱な地域に特例で認められている、「自家用有償旅客運送」制度の導入を、20以上の自治体が模索していると明かした。
同制度は23年3月現在、全国の580以上の自治体ですでに導入されている。日本の市町村総数は1720ほどだから、「特例」が3分の1以上の自治体で運用されているという、特例と呼ぶのが恥ずかしくなるような実態がある。
業界の顔色を窺いながらスタートする日本版ライドシェアは、運営主体として参入できるのが既存のタクシー業者のみで、稼働するのは各営業所のタクシー車両数が上限となり、発着地のいずれかは営業区域内であることが規定される。
運行管理をタクシー会社が担う前提で、ライドシェアが上手く機能するのかと言う疑問は否めない。自らの利権を確保するために、競争者の参入を阻んでいるタクシー業界を懐柔するステップが必要だとしても、如何にも日本風なスケジュールである。
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