特集2017年10月7日更新

衆院選台風の目に?小池百合子氏新党「希望の党」

東京都の小池百合子知事が結成した国政新党「希望の党」が、22日に投開票が行われる衆院選の台風の目になっています。そこで、希望の党の公約や結党に至るまでの流れなどをまとめてみました。

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目次

10月6日、「希望の党」の政策を発表

“三本柱”…「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」「憲法改正」

希望の党は6日、消費増税凍結や原発ゼロ、憲法改正を三本柱に据えた衆院選の公約を発表した。
三本柱として掲げたのは、(1)8%から10%への消費税増税「凍結」、(2)2030年までの原発ゼロ、(3)9条を含めた憲法改正論議。

消費税増税の凍結

自民党が実施を目指す2019年10月の消費税率10%への引き上げに関しては「前回の増税が消費に与えた影響を考えると、一度立ち止まって考えるべきだ」として「凍結」を主張。代替財源として国有資産売却や、大企業の内部留保への課税を盛り込んだ。また、消費税増税の前に国会議員の定数・議員報酬削減や公共事業などの歳出削減を徹底すると訴えた。

原発ゼロ

原発政策では、2030年までに原発をゼロにする数値目標を盛り込んだ。再生可能エネルギーの比率を30%まで向上させる取り組みも公約に明記した。

憲法改正

「真正面からとらえて議論していこうという希望の党の存在が、憲法改正に向けた大きなうねりをつくっていくのではないか」と強調した。公約でも「地方自治、国民の知る権利など幅広く取り組む」と明記、具体的には、地方自治に関する第8章を改正して「課税自主権や財政自主権を位置付ける」とした。憲法9条に自衛隊の根拠規定を追加することについては、「国民の理解が得られるかどうかを見極めた上で判断する」とした。

経済政策は「ユリノミクス」を提案

安倍政権の経済政策「アベノミクス」については「一般国民に好景気の実感はない」と指摘し、これに代わる「ユリノミクス」を提案。経済格差是正に向け、低所得者を支援するベーシックインカム(最低限所得保障制度)の導入を掲げた。大規模金融緩和について「円滑な出口戦略を政府・日銀一体となって模索する」との方針を示した。

「希望への道」しるべ…「12のゼロ」を目指す

「『希望への道』しるべ」として①原発ゼロ、②隠ぺいゼロ、③企業団体献金ゼロ、④待機児童ゼロ、⑤受動喫煙ゼロ、⑥満員電車ゼロ、⑦ペットの殺処分ゼロ、⑧フードロスゼロ、⑨ブラック企業ゼロ、⑩花粉症ゼロ、⑪移動困難者ゼロ、⑫電柱ゼロの「12のゼロ」を打ち出すことを明言した。

「花粉症ゼロ」にネットざわつく

「12のゼロ」の中の「花粉症ゼロ」には多くのネットユーザーが反応。一時Twitterのトレンドに浮上するほどの話題となりました。

ツイッター上では6日、公約の発表に関する報道を受けて、「花粉症ゼロはまじでやってほしい」と実現を切望する声も見られた。一方で、
「公約の意味分かってんのかな?」
「言うのは簡単だからな。実行できるとはとても思えん」
「とりあえず思いつくままに並べてるだけの印象」
と批判的な意見も見られた。

公約は全部で9つ

これまで紹介したものも含め、希望の党の公約は全部で9つありますので、箇条書きで紹介しておきます。

1. 消費税増税凍結
2. 議員定数・議員報酬の削減
3. ポスト・アベノミクスの経済政策
4. 原発ゼロへ
5. 雇用・教育・福祉の充実
6. ダイバーシティー社会の実現
7. 地域の活力と競争力の強化
8. 憲法改正
9. 危機管理の徹底

「希望の党」とは

党名の由来

「日本に足りないもの、それは希望」

党名の「希望」は、小池氏が昨年10月に立ち上げた政治塾「希望の塾」でも使われていた言葉で、小池氏のお気に入りの言葉だということですが、党名の由来について小池氏は9月25日の会見で以下のように述べています。

命名については「さまざまなものがあふれているけど、希望がちょっと足りないんじゃないかな、ということで。小学生が書き初めで最もよく書く字が希望であります。日本に足りないもの、それは希望。希望の党です」と説明した。

東京都議選で旋風を巻き起こし、都議会第1党となった地域政党「都民ファーストの会」でおなじみの「ファースト」も一時候補に挙がっていましたが、党名に組み込むことは断念したとのこと。

「都民ファーストの国政版」

都議選の「都民ファースト旋風」を国政に

小池都知事率いる「都民ファースト」は7月の都議選で圧勝。公認候補50人中、49人が当選し、第1党に躍進した。得票数でも188万票と、自民党の126万票を大きく上回った。

先ほど少し触れた「都民ファーストの会」は小池氏が事実上率いる地域政党で、7月の東京都議選で政権批判の受け皿になり、上記のとおり「圧勝」の結果を収めました。
そして、今回立ち上げた新党が「都民ファーストの国政版」などと表現されていることからも分かるように、党立ち上げに至った背景には「都民ファースト旋風」を国政でも起こしたいという思惑があります。

「希望の党」発足に至るまでの経緯

小池氏率いる「都民ファースト」の国政進出。この流れを簡単に振り返ります。

7月13日、小池氏の“側近”若狭氏が「日本ファーストの会」設立

8月7日、小池百合子東京都知事の側近の若狭勝衆院議員は、記者会見を開き、「日本(にっぽん)ファーストの会」の設立を公表した。これについて、小池知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」の国政進出に向けた動きとする見方が広がっている。
若狭氏は会見で、「日本ファーストの会」は7月13日に設立したとし、自民党に代わる「受け皿」として、二大政党の一角をつくっていきたいと述べた。
都知事選以来、小池氏との関係が深い若狭氏だが、小池氏が特別顧問をつとめる都民ファとの関係については「あくまで都民ファーストの会は名前のごとく都民第一。我々の政治塾は東京都ではなく国全体を考えるものであり、組織として別枠と考えている」とした。

8月中旬以降、若狭氏と民進党を離党した細野氏らが連携模索

8月11日、若狭氏はその前日に民進党を離党した細野豪志氏と会談し、連携を視野に政策協議を継続していくことを確認。以降、両氏は協議を重ね、細野氏と同じく民進党を離党した長島昭久氏なども含めて、国政新党の立ち上げ準備を着々と進めていきました。

2人は早速11日に、政権交代可能な2大政党の一翼を担う新党設立との方向性を確認。大都市圏を地盤とする数人が続く予定で、長島昭久、松沢成文とも連携を目論む。

9月11日、小池氏・細野氏・若狭氏の3者で会談

「国政は若狭に任せている」などと、新党結成の動きから一定の距離をおくような発言を繰り返していた小池氏ですが…

しかし実際は、小池知事が顔を出さざるをえないようだ。その一例が9月11日の小池知事、細野氏、若狭氏の3者会談だ。報道では「若狭氏が呼びかけて実現した」とされるが、こんな話も聞こえてくる。「実際には小池知事と細野氏が2者会談するはずだった。それに若狭氏が後で加わった」。
いったいどちらが正しいのか。小池氏の動向に詳しい都政担当記者に尋ねてみたところ、「どちらも同じ。結局は細野氏と若狭氏だけではダメで、小池知事が出てこないと始まらないということだ」とのことだった。

9月16日、若狭氏の政治塾「輝照塾」の初会合で小池氏が講師として登壇

「日本ファーストの会」を結成した若狭勝衆院議員(無所属)は、16日に衆院選の候補者選定の場ともなる政治塾「輝照塾」の初会合を開催し、約200人の塾生が結集した。
講師として登壇した小池氏は「東京に続いて日本も大改革を」と檄を飛ばした。

9月24日、細野氏、若狭氏ら7名の国会議員が会合

24日には自民党の福田峰之内閣府副大臣(翌25日自民党を離党し、内閣副大臣も辞任)や「日本のこころ」の中山恭子代表が小池新党への参加を表明。同日夜には細野豪志衆議院議員や若狭勝衆議院議員など、7名の国会議員が会合を開いて意見交換を行っている。

9月25日、小池氏が新党「希望の党」結成を発表

そして7名の国会議員による会合の翌日、小池氏による会見で突然「希望の党」の結党が発表されました。

小池氏が代表に就任「リセットして、私自身が立ち上げる」

東京都の小池百合子知事は25日午後、臨時会見を開き、国政政党「希望の党」を立ち上げることを発表した。
これまで自身の側近の若狭勝衆院議員らが新党設立を目指していたが、「リセットして、私自身が絡んで立ち上げていく。まったく新しい政党として結党宣言したい」と述べた。小池氏自身が代表に就く。

都知事のまま国政に関与

小池氏は新党の代表に就任しつつ、都知事としての職務は継続する意向を示しています。都知事のまま国政に関与する意義については…

現職の都知事である小池氏だが、「都政により磨きをかけ、スピード感をあげるために、国政に何らかの関与が必要」「国政で代弁する勢力を確保したい」との考えから、国政政党の結党に至ったと説明した。
報道陣から「二足のわらじになることで(都政)改革のスピードが落ちる懸念があるのでは」と兼務を懸念する質問が投げ掛けられると、小池氏は「全く当たらない。(国政で都政の代弁をすることで)都民には両方のプラスを感じていただけるように努力したい」と強弁した。

突然の結党発表だった?

小池氏による突然の「希望の党」結党発表会見。この会見は“側近”の若狭氏も知らなかった模様です。

新党の発表をすることはいつ小池氏から聞いたかについて、「少なくとも今日(25日)」とし、さらに「実は私、今日は携帯電話が壊れていて」「電話が壊れていたので、その間に着信があったので」として、会見を把握していなかった旨を述べていた。

9月27日には国会議員14人と結党会見

「日本をリセットするために」と宣言

新党「希望の党」は27日午前、東京都内のホテルで結党の記者会見を開いた。代表に就いた小池百合子都知事は「しがらみのない政治、大胆な改革を築く。日本をリセットするために希望の党を立ち上げる」と宣言。知事職は続投し、今回の衆院選には出馬しない考えを明言した。会見には、若狭勝衆院議員、細野豪志元環境相ら結党に参画した国会議員14人が同席した。

結党会見に出席した国会議員の顔ぶれ

氏名 肩書 直前の所属政党
細野豪志 衆院議員 無所属(8月まで民進党)
松原仁 衆院議員 民進党
笠浩史 衆院議員 民進党
長島昭久 衆院議員 無所属(4月まで民進党)
後藤祐一 衆院議員 民進党
福田峰之 衆院議員 自民党
若狭勝 衆院議員 無所属(7月まで自民党)
木内孝胤 衆院議員 無所属(8月まで民進党)
鈴木義弘 衆院議員 民進党
野間健 衆院議員 無所属
横山博幸 衆院議員 無所属(8月まで民進党)
行田邦子 参院議員 無所属
中山恭子 参院議員 日本のこころ
松沢成文 参院議員 無所属

「希望の党」の方針・政策は?

党綱領

9月27日に発表された党綱領の要旨は次のようになります。

1. 寛容な改革保守政党を目指す
2. 情報公開を徹底し、「しがらみ政治」から脱却する
3. 国民が希望と活力を持って暮らせる生活基盤を築き上げる
4. 平和主義のもと、現実的な外交・安全保障政策を展開する
5. 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)の徹底、民間のイノベーションの最大活用を図る
6. 若者が希望を持ち、高齢者の健康長寿を促進し、女性も男性も活躍できる社会づくりに注力する

「希望の政策」

25日の会見で小池氏が発表した「希望の政策」は以下のとおり。

希望の政治 1. しがらみのない政治
2. 議員定数・議員報酬の縮減
3. 行政改革:徹底した情報公開
4. 真の地方分権の確立
希望の社会 1. 女性政策など、ダイバーシティ政策の確立
2. 多様な教育(奨学金、高度研究、生涯教育)
希望の経済 1. 消費税対応 実感できる景気回復の実現
2. ポストアベノミクスのかわる成長戦略 不動産の有効活用 AI 金融
希望を守る環境・
エネルギー
1. 原発ゼロとゼロエミッション社会への行程作成
2. フードロス対策など
憲法改正 希望あふれる日本の礎

「希望の党」の選挙戦はどうなる?

「日本新党」「日本維新の会」…新党躍進の前例あり

熊本県知事を務めた細川護煕氏が1992年5月に設立した「日本新党」は翌93年の衆院選で35議席を獲得。衆院選後には非自民・非共産による連立政権を発足させて自民党の長期政権を終わらせるなど、旋風を巻き起こしました。また、大阪市長だった橋下徹氏らが2012年9月に結成した「日本維新の会」も直後の衆院選で議席を大幅に増やしています。
このように、新党が結成のインパクトそのままに選挙で躍進した例が過去にあり、希望の党にも注目が集まっています。そこで、選挙戦に向けてこれまでに伝えられている情報を整理してみます。

希望の党発足の余波で3極の構図に

「自民・公明」「希望・維新」「立憲民主・共産・社民」の3極

希望の党の発足により民進党の分裂が起こり、一部は希望の党へ合流、民進党の枝野幸男代表代行が新党「立憲民主党」結成に踏み切るなどして、10月10日公示、22日投開票の衆院選は「自民・公明」「希望・維新」「枝野新党・共産・社民」の3極の分かりやすい構図となりました。

希望の党は日本維新の会と連携

小池知事と日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事、大村秀章愛知県知事が会談し、東京都内の小選挙区では維新の候補者を立てず、大阪府内では希望の候補者を立てないという“棲み分け”を決めた。

公認候補は201人(10月7日20時現在)

希望の党の公認候補は、10月3日に発表された第1次公認から6日発表の第4次公認までで合計203人となっていましたが、7日に2人減って201人となっています。

「排除」発言が影響か…「失速」伝える記事も

結党時はその勢いで衆院選の主役になると思われていた希望の党ですが、日が経つにつれ「失速」を伝える記事が多くなってきました。
その原因のひとつに小池氏の「排除」発言があると多くのメディアで指摘されています。

あの発言を、小池氏は、どう捉えているのだろうか? 9月29日の会見で、希望の党に合流する民進党議員の一部に対して「排除致します」と絞り込みを宣言したことだ。その後、「希望の党」にいまひとつ勢いが出ない。代表の過激な言葉が影響していると指摘する声もある。
小池百合子都知事率いる「希望の党」の勢いが失速しつつある。
7月の都議選で、小池氏率いる都民ファーストの会は、連合東京や公明党などの支援を受け、都議会第1党に躍り出たが、衆院選では、あまり期待できないとみられる。小池氏の「選別・排除」手法への嫌悪感が広まっているのか。
「小池都知事が『希望の党』の代表となり、民進党とタッグを組んだ段階で『全員を受け入れることはさらさらありません』や『排除いたします』など、上から目線の物言いをして、不快感を表す有権者がじりじりと増えてきました」(政治部記者)

「排除封印」を明言

「排除」が世間の話題になっていることは本人も認識しているようで、「排除」はもう使わないとのこと。

今後、排除の言葉はもう使わないのか、と尋ねると「そうですね」と苦笑いで「排除封印」を明言した。さらに「それよりも…むしろ『賛同できる方を集める』。そちらの方向ですね」と軌道修正。排除は言い過ぎたと思うか?の問いには「うん…まあ言葉の問題ですね」と述べた。

小池氏の出馬はあるのか?

「小池氏自らが衆院選に出馬するのでは」という噂が結党以来ささやかれていますが、小池氏は何度も否定。10月7日に配信されてきたインタビュー記事でも改めて否定しています。

いまだにウワサが絶えない出馬についてにいては「サプライズ出馬はありません。当初から都知事を辞めることはないと言ってました」。

ただ、小池氏の「衆院選不出馬」も政党支持率が伸びない要因とされているため、出馬の噂は消えません。

有権者の期待をつなぎ止める策としては、「小池氏が公示日(10日)に電撃出馬して、都知事を自動失職する」か、「石破氏を首相候補に担ぎ出す」という“禁じ手”ぐらいしか考えられない。

小池氏が出馬すれば「都政を捨てた」との反発が予想され、出馬しなければ「失速」するとあって、どちらを選んでも苦しい戦いになりそうな情勢です。
公示日まで「サプライズ出馬」の可能性は消えませんが、果たして小池氏は出馬するのでしょうか。そして希望の党の躍進はあるのでしょうか。選挙戦の行方に注目が集まります。

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