「エマニュエル」自らの快感を求める女性、人間同士が触れ合えないポストセックス社会も描く オドレイ・ディワン監督&湯山玲子対談
映画.com / 2025年1月11日 20時0分
(C)2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – PATHÉ FILMS
「あのこと」でベネチア国際映画祭金獅子賞を獲得したオドレイ・ディワン監督が、「燃ゆる女の肖像」「TAR ター」などで話題を集めるノエミ・メルランを主演に起用した「エマニュエル」が1月10日公開となる。
今作は、1974年に映画化され日本でも大ヒットを記録した小説を基に、世界的なムーブメントを巻き起こした前作「エマニエル夫人」とはまったく異なるアプローチで、主人公エマニュエルの官能と欲望の目覚めを、謎めいた登場人物たちとのかかわりとともに洗練された映像、音楽で描出する。昨年11月に来日したディワン監督が、著述家・プロデューサーの湯山玲子と対談した。(構成/編集部、撮影/黒坂ひな)
※本記事には映画のネタバレとなる記述があります。
<あらすじ>
グローバルに展開するホテルの品質調査の仕事をするエマニュエルは、オーナー企業から依頼を受け、香港の高級ホテルに派遣される。最高評価の報告書を提出するエマニュエルだったが、ランキングが落ちたことが許せないオーナーは経営陣のマーゴを懲戒解雇できる理由を見つけるよう、エマニュエルにマーゴの粗探しを命じる。ホテルの裏側を調べはじめたエマニュエルは、怪しげな宿泊客や関係者たちと交流を重ねるなかで、自身の内なる欲望を解放させていく――。
▼人間同士が触れ合えない、ポストセックス社会も描く官能映画
湯山:エロス系エンターテイメント映画は、伝統的に男性の萌えポイント視点がほとんどで、女性もそこに乗っかっていくパターンが多いのですが、この作品はフェミニズムからの視点もよく効いており、ポストセックスの感性も入ってくる知的な構造を持った作品で驚きました。二つの表現の方向があったと思うのです。ひとつは、もはやタブーではなくなった女性の性的ファンタジーをエンタメするという映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」的アプローチ。
もうひとつは、SNSとITバーチャルが浸透し、出会いの機会や性的快楽の情報があふれ、その追求は当たり前となったが、その一方でハラスメントが深刻化しているリアルを投影した主人公という方向ですが、完全に後者でしたね。かつての「エマニエル夫人」が持っていたようなエロティックファンタジーが成立しない時代の性愛についての作品。官能的だけど、ムラムラ効果はそんなに無い、という作品になっていました(笑)。
ディワン:最初の映画「エマニエル夫人」は、ヘアが見えるとかどうとか、当時のそういう規制がちょっとゆるんだことで、人々の興味が掻き立てられて、映画館に駆けつけたのだと思います。しかし私の「エマニュエル」はそうではなく、あえて枠、構図を狭めて見えない部分を作ることによって、観客のイマジネーションを働かせ、そこに観客も参加してもらうことを求めました。
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