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先代からの圧「あなたの代で絶対に減らさないで」…資産を確実に守り継ぐための、相続に備えた“財産整理の極意”【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月16日 10時15分

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(※画像はイメージです/PIXTA)

資産を次の代へ減らさずに確実に承継するために重要なのは相続に備え、財産を「整理」することです。本記事では、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が、円滑な資産継承のための「資産の見える化」について、その方法を詳しく解説します。

先代から引き継いだ資産、それに付随する重いプレッシャー

先代が引き継いできた資産、祖父から聞いた話によれば自分の代で15代目になるそうだ。過去には、自宅周辺に広大な敷地があり、そのすべては一族の土地であった。

最寄り駅の〇〇駅までは他人の土地を通らずに自分の土地を通って行くことができたそうだが、この何代かにおいては相続税納税資金を捻出するために土地を売却したり、戦後の農地改革によって大きく土地を減らしたりと、当時に比べてだいぶ目減りしたそうだ。

いままでに祖父から何度も聞いてきた。過去には子宝に恵まれず、一族から養子で来たご先祖が、昼夜を問わず粉骨砕身の働きで窮地を脱し、安定をもたらしたこともあるそうだ。その一方で、祖父母や両親からは「自分の好きなようにしていいよ、なくなっても構わない」とも言われたが、明らかに本心ではなく、次の代、さらにその次の代へと「減らさずに」承継していって欲しいことが感じられた。

自分が父親から相続するときも、弟や妹との分割協議では難儀したし、そもそも全体の資産を把握するのに多くの時間を費やした。もしかしたら、いまだに気付いていないだけで、どこかの銀行に父親名義の口座があるかもしれないし、生命保険についても手続きできていないものがあるかもしれない。

最近では次の代へは自分がしてきた苦労はさせたくないし、円滑に承継できるようレールを敷きたいと漠然と考えている。

円滑に資産を承継するために

円滑に承継を行うための留意点などを踏まえて検証したい。

以前、ローンについて家族で共有することが大事であると記事にした*。ローンについては不動産などの資産と異なり、実物として把握することが困難であるため可視化することの重要性を説明した。

資産についてもローンとまったく同じである。個人の資産を大別すると「金融資産」と「不動産」にわかれる。昨今では、不動産以外の実物資産(金、絵画、高級自動車、高級時計など)や暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)に分散して投資されている方もいると思うが、本件では一般的になじみのある資産で検討したい(図表1参照)。

たとえば、「預貯金」についても複数の金融機関に口座を開設していたり、アメリカの銀行に口座があるような場合、後継者は把握が困難であろう。また、昨今ではWEB通帳などが主流になってきているため、通帳から口座を推測することも難しい。

また、多くの方が加入している生命保険についても、保険証券がバラバラに保管されていたり、一時払いにより保険料の支払いが完了しているものについては、そもそも本人が忘れていたり、出金履歴から後継者が把握することも困難となる。いざというときのためにせっかく準備していてももったいないことになりかねない。

また、自分自身で所有金融資産を把握しておく意味でも、一度きちんと整理をしておくことをお勧めしたい。

次に、不動産について検討する。特に土地に関しては、底地を所有しており、その上に借地権が存するケースも多いと思われる。それぞれの借地契約を把握しておく必要もあり、かつ契約満期における手続きについても共有しておくことが必要だ。

建物についても、特に賃貸用不動産の場合、収支の推移や保守管理の状況、大規模修繕の実施など長く安定的に賃貸事業を営むための検討が必要である。したがって、資産についても後継者が的確に全体像を把握していることが肝要である。

金融資産の「整理」しよう

資産のすべてを後継者に伝えてしまうと、資産をあてにしてしまって、その結果として一生懸命に自らの力で努力をしなくなってしまうのではないか、との話を耳にする。

個人的には「正にそのとおり」であると考えている。将来手にすることができる資産が見えると、その分の努力をせず、楽なことを選択するケースが多い。

たまに、資産家の一族において、資産欲しさの身勝手な理由に兄弟や親戚、両親などを手に掛け、逮捕されるような事件があるが、そのような「資産をあてにする気持ち」から生じていると思う。

したがって、たとえば預金については金額を明記せず、「どこの金融機関のどこの支店に口座があるか」に留め、利用目的を記載するのみでいいのではないだろうか。

さらには、表の作成にあたっては利用頻度に応じた採番をし、各口座の優先順位を示したり、本人名義のみではなく本人が管理しているほかの口座(図における利用頻度4・5)を加えておくことも必要だ。

ここで、留意すべき点は、本人が長男のために貯蓄しているような口座(図における利用頻度5)である。よかれと思って貯蓄していても「名義預金」として相続税の課税対象となる可能性が高い。

※名義だけ長男であり、実質的には本人の管理下にある口座

また、利用頻度でランク付けすることで「真に必要な口座」を明確にし、その他については解約することを検討したい(たとえば図表2における利用頻度6の海外口座)。

後継者のためにも、いかにシンプルな形としておくかが承継にあたってのキモである。

株式や保険についても同様である。金額は明記する必要はないものの、内容の概要については明確にする必要があると思う。

また、生命保険の非課税枠利用については相続対策の有効な手段であることから、この点については明示してもいいと考える。

預金同様に、少額であったり、運用成績の芳しくない投資などについては、早期に手仕舞いのうえ解約することも検討したい。そのような観点での「整理」も必要である。

不動産についての明確化

不動産については、一団の土地として、または土地建物一体として、その効用を発揮することから、まとめられるものはセットとして採番することが重要である。

また、土地については、借地や底地、貸家建付地であったり、建物についても賃貸に供しているか否かで相続税評価の手法が変わることから「利用状況」を明記しておく。

不動産の価値を把握しておくという点では毎年請求のくる「固定資産税評価額」が利用できる。土地については固定資産税評価額の8/7(およそ1.14倍)が、概ねの相続税評価額であり、建物については「固定資産税評価額=相続税評価額」となることから、相続評価の概算として把握しておきたい。

金融機関から融資を受けて建物を建築する場合には、土地建物に抵当権等が設定される。また、銀行の担保評価が不足していればほかの不動産を共同担保に供することから「どの借り入れに対して、どの不動産を担保提供しているか」を明示することも大切である(図表4、右のハコ)。

たとえば、No.3の駐車場については、自宅建築時の借入で担保提供しており、かつ、その後建築したNo.4の建物の借入の際にも第二順位で抵当権を設定していることが窺える。さらには、「m2単価」を明示しておけば、どこの不動産の資産性が高いか判別しやすいし、建物についても構造と単価により大まかな築年数を窺い知ることができる。

当該図の項目のほかにも、借入にかかる情報や、各物件の収支にかかる情報なども追加していくと、より理解が深まりやすい表となるが本件では主要な項目に留めてシンプルにした。

上記のとおり不動産を整理することで概ねの課税評価額(図表4では約3.7億円)や負債の状況が把握可能であることから、後継者の資産把握の助けになるものと思われる。

次に、多くの地主さんが所有される底地についても触れたい。土地の賃貸借契約書は建物の賃貸借とは異なり、非常に個別性が強く、過去の関係性などもあり、各賃借人によって契約内容が大きく異なる。また、長期間の契約が一般的であることから、期間中に相続が発生し、それぞれの当事者が変わることもよくある。

したがって、たとえば図表5のように主要な契約内容と今後発生する更新時期について明確にすることで、更新漏れの防止や当事者間のバランス調整など後継者がしっかりと理解しておいてもらうことが重要である。

まとめ:資産の見える化の必要性

・資産ごとに整理のうえ相続人としっかり共有しておく

・金融資産については不要なものは解約するなどしてシンプルにしておく

・金融資産の具体的な額を明示すると、後継者のやる気に影響する可能性があることから必要最小限の情報に留めておく

・不動産については、その利用状況によって相続税評価額が異なることから、明確にして整理しておく

・土地の賃貸借契約は個別性が強く、かつ、期間が長期に亘ることから契約期間中に相続が発生することも含んで準備しておく

以上のポイントを押さえることが重要である。

*該当記事:あんなに苦労して借入したのに…アパートローンを「借りっぱなし」にした地主の末路【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】

小俣 年穂

ティー・コンサル株式会社

代表取締役

<保有資格>

不動産鑑定士

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

宅地建物取引士

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