上場しても「大金持ち」になれない創業社長の悲哀 上場によって売却できる保有株は多くない
東洋経済オンライン / 2024年3月8日 16時0分
起業家にとってIPO(新規公開株)は、一つの目標です。資金調達しやすくなり、信頼度も上がります。一方、IPOによるデメリットや、気を付けるべき点は意外にも知られていません。本稿では、自身も起業家として数々の辛酸をなめ、経営の伴走者として1000人以上の経営者の苦難を間近で見てきた徳谷智史の著書『経営中毒』より一部抜粋・再構成のうえ、社長にとってのIPOのメリット・デメリットをご紹介します。
上場するスタートアップは、ほんの一握り
ベンチャーキャピタルなどから出資(エクイティ)を受けて、スタートアップを経営していると、意識せざるをえないのが、「イグジット(出口)」です。
人が定着し、事業も軌道に乗ってきて資金も目処が立ちそうだ。それくらいのタイミングで「どうする、イグジットしちゃう?」なんて会話が社内で繰り広げられたりします。
イグジットとは、要は「会社の『出口』をどうするか」ということ。大別すると、イグジットは2つの種類があります。
1つ目はIPO(Initial Public Offering、新規公開株)です。自社の株式をパブリックな証券取引所に上場することで、誰でも株式を売買できるようにすることです。
2つ目はM&A(Mergers and Acquisitions)です。Mergersとは「合併」、Acquisitionsは「買収」を意味します。合併は複数の企業を統合して1つの新しい会社にすること、買収は会社を丸ごと買い取ることですね。丸ごとではなく、一部の事業だけ譲渡する事業譲渡などもあります。
じつは99%以上の会社は、IPOもM&Aもしません。残り1%以下が上場するとして、その中でスタートアップが占める割合はほんの一握り。
それだけ少数ではありますが、エクイティによって資金調達をしたスタートアップは、IPOあるいはM&Aを目指す必要があります。なぜなら、IPOやM&Aをしないと、投資家がリターンを得られないからです。
投資家目線で見ると、投資している企業の「出口」は大きな関心事です。まだ企業が成長するかわからないときにリスクをとって投資をして、株式を保有するわけですが、それだけでは何の利益も出ません。
投資家がスタートアップに対してIPOを求める理由
エンジェル投資家のなかには、「リターンは何年かかってもいいよ」というスタンスの人もいますが、ベンチャーキャピタルやファンドは、金融機関や事業会社、機関投資家などから集めたお金で出資・投資をしているので、そうしたプレイヤーたちにできるだけ早くリターンを返さなければなりません。
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