父倒れ一人になったタイ出身・女子高生の旅立ち 大阪ミナミ「外国ルーツの少女」の成長【後編】
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 19時0分
外国にルーツを持ち、厳しい状況に置かれている子どもたちを支援する「Minamiこども教室」(大阪市中央区)の様子を追った、ジャーナリスト・玉置太郎氏の著書『移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から』より一部を抜粋し、3回にわたってお届けしています。本稿は3回目です(前編、中編はこちら)。
「普通」の時間になれば
メイはその後しばらくウカイさん宅に泊めてもらい、自宅へ戻った6月末、晩ご飯を食べに再び我が家へ来た。その日は親友のマナミも一緒だった。マナミも緊張していたそうだが、メイとは逆にいつにも増して口数が多く、にぎやかな食卓となった。
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それからメイは週1回のペースで、うちへ晩ご飯を食べに来るようになった。食卓での話題は尽きなかった。
「部活動の試合で勝てた」「テストの結果やばかった」「同級生の女子と微妙」「隣のクラスのあの男子が気になる」と、高校生らしいおしゃべりを聞かせてくれた。
メイの誕生日にはマナミも一緒にケーキでお祝いし、クリスマスには心斎橋のイタリアンへ少しおめかしして出かけた。年末には2人がうちへ泊まりに来て、一緒に年越しを過ごした。
私が仕事で帰れない日でも、メイは妻と2人で楽しくやっていた。妻とはSNSの連絡先を交換し、私相手の時よりも気軽に連絡を取り合っていて、ちょっとうらやましかった。一度、メイから「ピアスが外せなくなった」と妻にメールがあり、夜にメイの家へピアスを外しにいったことさえあった。
そうして一緒に食卓を囲みながら私が考えていたのは、この時間がメイにとっての「普通」の時間になればいいな、ということだった。
メイの話からは常に、「普通」の高校生にはない悩みが見え隠れした。
奨学金の申請書類をすべて自分でそろえなければならない。生活保護費から日々の支出を考えなければならない。介護施設に移ってリハビリをする父親のケアをどうするか。今の家で一人で暮らし続けられるのか――。
17歳が独りで抱えるには重すぎる悩みが、メイの頭の中には常にあった。
だから、うちに来て、3人で食卓を囲んでいる瞬間は、ただ心を開いて重荷を下ろし、自由に思いを打ち明けられる時間にしてほしかった。それは「普通」の高校生なら意識もしないような、当たり前の日常だったはずだ。
互いに楽しいひととき
メイにはそんな「普通」の時間が必要なんじゃないか、という控えめな臆測が、私にはあった。その臆測は、私自身の経験からきている。
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