2050年のシン・日本経済システムをデザインする 失われた40年回避のための「3つの政策」とは?
東洋経済オンライン / 2025年1月11日 8時30分
今回は「このままでは『日本は失われた40年』へ突入する」(2024年12月28日配信)の続編である。
日本経済停滞の原因は1980年代のバブルで従来の日本の経済システムが失われ、代わりになる新しいシステムを作らなかったことであり、「失われた30年」とは、システム不在の30年であった。ならば、次に必要なことは、30年間存在しなかった新しい日本経済システムのデザインをすることである。今回は、その試行錯誤の過程を見てみよう。
バブル前までは「1940年体制」が機能していた
まず、日本の1980年代のバブル前までのシステムはどのようなものだったか。いろいろ議論したいところであるが、「1940年体制」というのが一応の学界のコンセンサスであろう。
太平洋戦争という総力戦のために、アメリカに比べ圧倒的に不足している物的資源を効率的に戦争のために動員する仕組みが作られた。その法律や制度体系が戦後も残り、金融資本を含むすべての生産要素を経済社会全体として有効に効率的に動員するシステムとして、戦争後の経済システムとして流用され、生かされた。
戦後の官僚たちが内閣のリーダーシップの下、このシステムの下で、傾斜生産をはじめとし、長期信用銀行、都市銀行、信託銀行、地方銀行の間で役割分担がなされた。メインバンクシステムは、責任をもってモニタリングを行う銀行が存在し、しかし、メインバンクが強くなりすぎないように、メイン代替の可能性もあるということで、メインの融資先からの搾取的な行動を規制した。株式市場はあくまで補完とし、限られた金融資本、人材を有効的に使う仕組みを作り上げた。
「全国九電力体制」も、戦前の電力会社同士の過当競争による二重投資による非効率を防ぐために、「電力王」松永安左エ門(1875~1971)が、戦前から主張していた統制された競争を実現した。
地域独占の下でも効率化を進めるために、「ヤードスティックコンペティション」(電力会社同士の効率性を比較する)という考え方や、価格低下を促す政府による効率性のチェックの体制が取られた。これもサプライサイドの供給制約を打破するため、産業のための電力の効率的な安定供給のためにデザインされた。
独占禁止法は、米ソ冷戦、朝鮮戦争という外的な理由によって実効性が弱められたが、その機会を利用して、何よりも供給制約を打破し、無駄な競争による二重投資を避けたいという日本政府の基本方針があった。
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