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「わざわざ買った防災用品」はほぼ役に立たない…本当に役立つ「9つの日用品」を防災のプロが解説する

プレジデントオンライン / 2023年9月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

災害に備えるためには何をすればいいのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは「わざわざ防災用品を買う必要はない。大事なのは『いつ、何が起きてもおかしくない』という考え方をベースに持ち、日々の暮らしの中で防災を意識することだ」という――。(第1回)

※本稿は、和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

■「防災袋を買ったから安心」ではない

NTTドコモが2020年6月に行なった「防災対策に対する意識調査」で、「防災対策はしていない」および「防災対策をどちらかというとしていない」と回答した人の割合は、65.3%にのぼりました。とはいえ災害に備えて、防災グッズや食料・水の備蓄をしている方も多いことと思います。

しかし、防災袋が押し入れの奥にしまい込まれていたり、非常用食料の賞味期限が切れていたりしてはいませんか? 「防災用品」として売られている専用の商品は割高なモノが多いのに、もったいないですよね。それに防災用品を買っただけで安心して、「私は災害に備えている」という気になってしまうことも否定できません。災害はいつ襲ってくるかわかりません。そこが一番怖いところなのです。

ですから、毎日歯を磨くように、顔を洗うように、常に頭の片隅で防災についての意識を保っておくことが大事です。なにも戦時下の国の人たちのように、毎日怯えて暮らせというわけではありません。

家の中の通路に避難時に障害となるモノが置かれていないか、ドアや窓はスムーズに開閉できるかなど、あたり前の住まいの点検をしておくことがいざというときの生死を分けるのです。それは防災だけではなく、日々快適な生活を送ることにも直結しています。

■防災用品を用意するより大事なこと

コロナ禍の間に手洗いやうがいが習慣化して、沈静化したといわれる現在でも継続している方、個人の裁量に任されたけれども人込みや店舗ではマスクを着用する方が大勢いらっしゃいます。これは3年にも及んだコロナ禍で習慣化されたからに他なりません。防災も同様に習慣化することが何より重要です。災害から大事な生命と財産を守れるか否かのすべては、個人の心構えにかかっているのです。

災害に見舞われたとき、「なぜ、こんな時間に!」「どうして私が住む地域に!」などと驚いたり、あわてていても始まりません。「いつ、何が起きてもおかしくない」という考え方をベースに持ち、日々の暮らしの中で防災を意識していただきたいと思います。

自動車の教習所や免許センターでは「だろう運転」「かもしれない運転」ということを、教えています。「だろう運転」とは、「この交差点を急に曲がっても大丈夫だろう」などという根拠のない予測に基づいた運転で、「かもしれない運転」とは「もしかしたら子どもが飛び出してくるかもしれない」など、あらゆる可能性を想定した安全な運転のことです。

この「かもしれない運転」の意識をぜひ防災に関しても持っていただきたい。それが「生活防災」の基本です。そして、「防災用品をわざわざ用意する」のではなく、いざというときのために「普段使うものを防災に役立つかどうかという観点を入れて選ぶ」というのが、「生活防災」のために重要な点です。

では具体的な「生活防災」の方法についてご説明していきましょう。

■防災グッズになる9つの日用品

「生活防災」で何より重要なのは、先にお話ししましたが、「いざというときの備えの防災用品」ではなく「日常的に使うモノを防災グッズにしておくこと」です。その代表的な例をご紹介しましょう。

◎新聞紙

溜まるとかさばるので、つい処分してしまいがちな新聞紙。新聞紙はさまざまな用途に利用できます。燃料がないときの焚きつけに使うほか、加工してコップや食器、避難所で使うスリッパを作ることもできます。その方法はネット上で数多く紹介されています。衣服の間に入れれば保温効果もあり、細長く丸めれば骨折時の副え木になるなど大活躍します。

最近では新聞をとっていないご家庭も増えてきていますので、チラシや雑誌などを一定量保管しておくのもお勧めです。

新聞紙
写真=iStock.com/Wako Megumi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi
◎ダンボール

自宅で避難生活をしている場合に、割れたガラス窓の一時的な補修、家財の整理や持ち出しの際など、多くの用途に使えます。また、災害発生時に自宅を離れ、避難所へ移動しなければならない場合にも、隣の家族との間のパーテーションとして使用したり、簡易ベッドを作ったりなど、ダンボールは非常に役立ちます。敷物として使えば断熱効果も高く、ある程度のクッション性もあるため、学校の体育館など避難所の硬い床でも体を休めることができます。

トイレが使用できないような状況では、ダンボール箱を座りやすいように加工して、ビニール袋をかぶせて簡易トイレを作ることもできます。ダンボールや新聞紙などは余裕のあるときにすぐ持ち出せるよう、一定の量を玄関近くに保管しておくことをお勧めします。

■防寒にもなるアルミホイル

◎ガムテープ

ガムテープはダンボールを活用するときの必需品です。壊れた家屋の一時的な修繕などにも利用できます。割れたガラスの破片を取るときにも活躍しますし、ケガをしたときの簡易的な止血や骨折時の副え木を固定するときにも使えます。

また、避難所で持ち物の名札や伝言用メモなどをいろいろな場所に貼りつけるのにも便利です。油性ペンで書きやすい布製のガムテープを用意しておくのがいいでしょう。そしてガムテープとペンは一緒に保管しておきましょう

◎ラップ

ラップは新聞紙などで作った食器に巻けば、食後にそのまま捨てることもできるので、水の節約になります。ケガをしたときに患部に巻いたり、食料の保存、細くねじってひものようにしたりするなど、多くの用途で活用できます。

◎アルミホイル

アルミホイルはフライパンに敷いて調理してそのまま捨てれば、洗剤もいらず、片づけも簡単です。アルミホイル自体を加工して調理器具にすることもできます。丸めて、たわし代わりに調理器具の汚れ落としに使うこともできます。寒冷期の被災時に、断熱効果が高いアルミホイルを服の間に入れたり、二重にした靴下のつま先に入れたりして防寒することも可能です。

■簡易トイレにもなるビニール袋

◎レジ袋

スーパーやコンビニでもらうレジ袋は2020年から有料化されましたが、少量でもストックしておきましょう。避難所で私物を分類・収納するだけではなく、腕をケガしたときに三角巾代わりにしたり、自宅のトイレが使えなくなったときに、取っ手の部分を便座のU字部分に引っかければ簡易トイレとして使用することができます。

◎カセットコンロ

鍋料理などに使うカセットコンロは、災害時に電気やガスのライフラインが止まったときに大活躍してくれます。カセットガスボンベ(CB缶)の保管期間は約7年とされていますので、毎年1、2本を消費するように心がけてカセットコンロを使い、新しいボンベを補充するようにしましょう。

◎家族人数分のカトラリー

被災時でも食事は健康と体力を保つために欠かせません。キッチンが被害を受けたときに備えて、普段使っているお箸やスプーン、フォークなどの予備を家族の人数分セットにして、防災袋などに入れておきましょう。避難所などで必ず役立ちます。

◎衛生用品

旅行用の歯ブラシ、タオルなどと合わせてマスクや除菌用ウェットティッシュなどを防災袋にまとめておきましょう。コロナ禍が落ち着いても避難所の衛生状態は悪く、感染症はすぐに蔓延します。

次に「生活防災」の備蓄についてお話ししましょう。これらも「いざというときのため」ではなく、毎日の生活で使うものです。

■もっとも備蓄すべきもの

①水

備蓄の優先順位の第一は「水」です。水道が止まると日常生活が営めなくなり、避難所へ移動せざるを得なくなるからです。例えば非常用トイレなどは持っていないご家庭が大半でしょう。しかしマンションなどでは電気が止まると水道が止まります。そうするとトイレも思うように使えなくなるのです。つまり「水」の準備が最優先なのです。

成人男性が1日あたり体内に取り入れている水の量はおよそ3リットル。一般的には3日分の水の備蓄が必要といわれていますが、余裕を見て1週間分はあるといいでしょう。過去の災害例を検証しても、1週間も経てば配給物資がほぼ届き始めています。ということは、家族1人あたり1日3リットル×1週間×人数分の水を備蓄しておけば安心です。ちなみに私は、2カ月分くらいの飲料水を備蓄しています。

■「風呂の水を溜めておく」はお勧めできない

それ以外にも、食器洗いや洗濯のための水が必要なので、水道水を2リットルのペットボトルに入れ、10〜20本くらい用意して定期的に交換しています。注意していただきたいのですが、よく言われる、「お風呂に水を溜めておく」ことはあまりお勧めできません。

風呂水というのは、非常に不衛生です。お風呂に誰かが一度入ったら体表面の細菌が流出して、お湯が大腸菌などでいっぱいになり、日を追うごとに数千倍に菌が増殖します。被災時の過労やストレスで免疫力が落ちていると、そういう不衛生な水が目に少し付着しただけで簡単に結膜炎などになります。

風呂水は、火を消したり、植木の水やり、トイレを流したりするぐらいにしか使えないのです。マンションなどの集合住宅でトイレが流せなくなった場合に備えるには、風呂水を溜めておくよりも、普通の水道水をある程度の量、ポリタンクなどに用意しておくことをお勧めします。

浴槽
写真=iStock.com/familylifestyle
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/familylifestyle

■高価な非常食を買う必要はない

②食料

「ローリングストック」という備蓄の方法を最近よく耳にするようになりました。普段食べている食材で、缶詰、レトルト食品、パスタなどの乾麺など、わりと保存の利くものをやや多めに購入し、賞味期限の古いものから消費していくやり方です。

賞味期限が長期にわたる「非常食」は、普段食べているものと比べると割高です。昔の非常食の定番だった「乾パン」などに比較すれば、種類も豊富になり、栄養価も高く、味も素晴らしいものが揃っています。それでも、しまい込んだあげくに賞味期限を過ぎてしまい捨てるという悪循環に陥りがちなのです。

ローリングストックなら、「賞味期限5年」「賞味期限10年」といった特別な長期の保存食を購入する必要はありません。被災時には、手間がかからず簡単に栄養を補給でき、かつ満足感を得られるものを食べることが、二次的な健康被害を防ぐ意味でも重要です。

■お勧めの食材は「パスタ」

ちなみに、私は約1週間分の麺類や缶詰などの保存食料は常にストックしています。一般的には3日分の水や食料を備蓄することが推奨されていますが、今後、大規模な災害が発生する可能性が高い日本に住む限りは、家族全員が配給などを受けずに、1週間過ごせるよう計算して、水や食料を用意しておくようにしましょう。

和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックスPLUS新書)
和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックス【PLUS】新書)

「1週間分、そんなに!」と思われるかもしれませんが、普通のご家庭では冷蔵庫の中に、だいたい3日分くらいの食料が入っているそうですから、それに4日分の水と食料を追加すれば大丈夫だということです。そうしておけば被災しても1週間、家族が飢えや渇きに苦しむことがなくなるのです。

では、どのような食料を備蓄しておけばいいでしょうか。私は「パスタ」をお勧めしています。賞味期限も約3年あり、パスタは誰でも簡単に調理ができ、時間もかかりません。例えば、毎月15日と30日は「パスタの日」と決めて、食べた分だけその都度補充していけば、ローリングストックができます。

これも立派な「生活防災」です。そして、災害時に1日3食を食べる人はあまりいません。切羽詰まったときの人間は、お腹が空かないものです。2食ないし1食あれば十分です。ただし、免疫力の低下に備えて、梅干し、蜂蜜、保存性の高いコンパクトな個別包装の緑茶ティーバッグなども用意しておきたいところです。

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和田 隆昌(わだ・たかまさ)
災害危機管理アドバイザー
感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取り、災害や危機管理問題に積極的に取り組んでいる。専門誌編集長を歴任。長年のアウトドア活動から、サバイバル術も得意。主な著書に『大地震 死ぬ場所・生きる場所』(ゴマブックス)、『まさか我が家が⁉ 命と財産を守るサバイバル・マニュアル21』(潮出版社)、『最新版 中高年のための「読む防災」』(ワニブックス【PLUS】新書)など。

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(災害危機管理アドバイザー 和田 隆昌)

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