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50歳以降「男性の生存率」は女性より大きく減少する…50代前後に体内で起きる異変と男性更年期障害の関係

プレジデントオンライン / 2024年3月7日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

更年期障害は男性にもある。どんな症状なのか。医師の池井佑丞さんは「憂うつ、イライラ、不眠といった精神症状が現れやすいのが特徴で、精神科を受診する人が多い傾向にある。発症しやすいのは、40~60代の働き盛りの人だ」という――。

■男性にもある「更年期障害」

少し前までは女性特有の症状と認識されていた「更年期障害」。しかし、近年男性にも更年期障害の症状が見られることが周知されてきました。更年期にはこれまでと違った変化が心身に現われ、人によっては治療が必要な場合もあります。現在更年期障害の症状を疑う方はもちろん、そうでない方も今後の健康づくりを考えるきっかけと捉えてお読みいただければと思います。

まずは更年期の症状について、男女の違いを見てみましょう。

女性の場合、閉経の前後5年くらいの間に現われるため、主に45~55歳ごろの時期を更年期とよびます。閉経に伴い卵巣の機能が少しずつ低下し、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが徐々に減っていきます。閉経するとエストロゲンの分泌はなくなり、ほてり・のぼせ・発汗・頭痛・めまい・憂うつ・イライラなどの症状が現れると考えられています。

■うつ症状などで精神科や心療内科を受診するケースが多い

一方男性の場合、閉経のようなはっきりとした節目はありませんが、40代後半から徐々に症状が現れる方が多いようです。男性ホルモンが徐々に減少し更年期障害の症状が現れますが、体力の低下や周囲の環境など、他の要因も大きく影響していると考えられます。

症状としては憂うつ・イライラ・不眠といった精神症状が現れやすい傾向があり、他にも疲労感・ほてり・発汗・しびれなどが挙げられます。また、女性にはあまりみられない性機能の低下を伴う場合が多いのも特徴です。40~60代の働き盛りの人に発症しやすく、特に几帳面でまじめな性格の人、責任感が強い人、運動不足の人、ストレスをためやすい人に起こりやすいと言われています。

男性更年期とは、男性ホルモン(テストステロン、アンドロゲン)の低下に伴い体に生じる症状・病態のことをいい、病名としては加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)と呼びます。LOH症候群の場合、女性の更年期障害の代表的な症状である自律神経失調症状(ホットフラッシュや動悸(どうき))で悩む例は少なく、精神・心理的要因の強い症状(うつ症状など)として発現することが多い傾向にあります。そのため精神科や心療内科を受診するケースが多々ありますが、泌尿器科あるいは内科が専門となります。

■テストステロン値が低くなるとQOLが著しく低下する

LOH症候群の外部要因としては肥満、飲酒、喫煙も挙げられます。ただし、禁煙でさらにテストステロン値が低下する場合もあるため、医師と相談の上取り組みましょう。

LOH症候群は、カウンセリングと血液(主にテストステロンの値)・尿・唾液検査などから総合的に診断します。テストステロンは男性ホルモンの主な構成成分で、筋肉や骨の強化・生殖機能・認知機能の維持が主な働きです。この値が低くなると性機能障害、認知機能・気分障害、筋肉量の減少、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性を介したメタボリック症候群、貧血、骨密度の減少が生じ、男性のQOLを著しく低下させます。

テストステロンの95%は精巣で作られ、加齢とともに減少します。40歳の2~5%、70歳では30~70%にテストステロン値の低下が見られるといわれています(順天堂大学医学部附属順天堂病院泌尿器科ウェブサイト)

患者に説明している医師
写真=iStock.com/kokoroyuki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokoroyuki

■女性よりも「うつ症状」が現れやすいのが特徴

症状の評価はAging Male Symptom (AMS) scoreが国際的に汎用されています。AMSは精神・心理、身体、性機能について17項目のセルフアセスメント型の症状スコアで、17項目についての5段階評価を総計し、合計26以下は正常、27~36は軽度の症状、37~49は中等度の症状、50以上は重症としています〔MAZE MEN’S SEXUAL & REPRODUCTIVE HEALTH AGING MALE SYMPTOMS SCORE (AMS)〕

前述のとおり、LOH症候群は女性の更年期障害と比べ、うつ症状が現れやすいことも特徴です。ほかには、なんとなく調子が悪いといった健康感の減少や、興味や意欲の喪失、不眠、不安感のほか、怒りっぽくなったり、集中力や記憶力の低下などが挙げられます。性欲の低下に加え、これらの症状に3つ程該当する場合はLOH症候群の可能性が高いと考えられるため、医療機関の受診をお勧めします。

■「50歳以降」男性の生存率は低下する

令和4年の厚生労働省の調査によると、日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳で、男女共に世界的に見ても高い水準にいます。また、世界共通で女性が男性よりも長寿であることもわかっています(厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」2023年7月28日)

ではなぜ女性の方が長生きするのでしょうか。統計データで調べると、実は50歳までは男女の生存率はあまり変わりません。ところが50歳以降、男性の生存率が下がります。50歳前後から何らかの異変が起きる男性が増えはじめることが男性寿命の急降下に繋がっていると推測されます。その「異変」に、男性ホルモンの低下によるLOH症候群が関係しているのではないかと考えられています。

男性ホルモンの低下には個人差があり、数値が高い方は高齢でも元気な方が多い傾向にあります。なお、男性ホルモンは女性にも存在し、高齢でもお元気な方は男女共に男性ホルモンの一種であるDHEA数値が高いとされており、男性ホルモン=元気ホルモンとの考え方も広まってきています〔熊本悦明「健康長寿医学としての男性医学」国際抗老化再生医療学会雑誌、第2巻(1~10)2019〕

■厚労省の調査では「50代の20%」が重度・中程度のLOH症候群

近年ではテストステロンの低下が、動脈硬化や心筋梗塞、糖尿病、うつ病などのリスクを高めることもわかってきました。QOLの高い生活を送るためにも、テストステロンの低下を防ぐことが大切です。テストステロンの分泌量を増やすのに有効とされる3つのポイントをご紹介します。

■食事

テストステロンの主原料はコレステロールです。特に摂取するとよいといわれるのがニンニクやタマネギで、これらに含まれる含硫アミノ酸がテストステロンの産生を上げる働きがあります。また、ニンニクはタンパク質と一緒に摂ることでより効果が発揮されます。

まな板の上にコショウをまぶしたステーキ肉、アスパラ、ニンニク
写真=iStock.com/Stefan Tomic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Stefan Tomic
■睡眠

男性ホルモンは睡眠中の副交感神経が優位のときに分泌量が増えるため、睡眠不足になるとテストステロンが低下しやすい状態となります。起床後に日光を浴びる、寝る前にPCやスマホを触らないなど、睡眠環境を整える工夫をしてみましょう。

■運動

運動や筋トレをすることはテストステロンの産生を促します。基礎体力の向上や糖代謝の改善などさまざまなメリットもあるため、普段運動の習慣がない方もスクワットなど、簡単にできることから始めてみましょう。

男性更年期障害は男性ホルモンの低下により、誰にでも発症する可能性があります。厚生労働省の意識調査によると、重度・中等度のLOH症候群に該当する方は40歳代で18.1%、50歳代で20.7%との結果も出ています。(厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」基本集計結果、2022年7月26日)しかし、その症状に応じた薬や漢方薬などを使用することで治療することが可能です。気になる症状がある方は一度医師に相談されることをお勧めします。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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