大改造中の山手線渋谷「私鉄」が変えた駅前風景 かつての渋谷の雰囲気は下北沢や裏原宿が継承
東洋経済オンライン / 2023年11月16日 6時30分
こうした交通網は、約90年を経て、ほぼすべてが大きく姿を変えた。
1969年廃止の玉電の後身は現在の東急田園都市線で、1977年に新玉川線として地下駅が開業。翌年から営団地下鉄(当時)半蔵門線との相互直通運転を実施している。1997年には井の頭線渋谷駅が改良工事により、現在地に移転した。2008年に東京メトロ副都心線が開業し、2013年に地下化された東急東横線と相互直通運転を始めている。JR渋谷駅改良工事が始まったのは2015年だ。
人が集まりやすい地形
水の流れのように、渋谷は人が集まりやすい地形であったと言える。今は暗渠になっている隠田川と宇田川が合流し渋谷川となっていたのが、今の宮益坂下交差点付近にあった宮益橋だった。宮益の地名は、坂の途中にある御嶽神社に由来する。元は富士見坂と言ったが、江戸時代に「お宮の利益を願って」町の名が宮益町となったのを受けて宮益坂と呼ばれるようになっている。古くは職人の町であった。
山手線に沿った宮下公園は、御嶽神社の北側にあった、皇族の一つ、梨本宮の屋敷の下であったため町名が宮下町になり、公園の名にもなった。
2011年に再整備され「MIYASHITA PARK」に生まれ変わっている。大きく変貌しつつある渋谷の中で、わずかながらも変わらぬ盛り場の風情を残しているのが、その南側の「のんべい横丁」だ。戦後、渋谷川沿いの狭い土地に、空襲で焼け出されて闇市に集まっていた飲食店が移されたのが始まりである。
青山へつながる、どちらかと言えば落ち着いた街並みになっている宮益坂周辺に対し、西側の道玄坂とその北の渋谷センター街、宇田川町一帯が、若者の街・渋谷を代表するエリアである。日本一有名な交差点かもしれない渋谷駅前のスクランブル交差点に始まり、渋谷のイメージを形作っている一帯だ。駅東側ながらも、渋谷の新しいランドマークが「SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE」と命名されたところにも、文化の波及が感じられる。
いちばんにぎわう道玄坂一帯
今日の渋谷文化の中心地に位置しているのが、東急に対抗する形で進出してきたセゾングループであるのが面白い。西武百貨店の開店が1968年。渋谷PARCOは1973年にオープンした。ここから熾烈な開発競争が始まる。
2023年に再開発のため閉店した東急百貨店本店は1967年の開店。さらに1978年には現在のハンズ渋谷店や、1979年には現・SHIBUYA109もオープンしている。従来型のターミナル駅に併設された駅ビルデパートを中核とする、阪急の小林一三に始まる「私鉄型経営戦略」が町全体へ、さらに自社の鉄道がない町へも広がり、大きく方針を変えたのは渋谷からとも言えそうだ。
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