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旅行や長時間移動する時におすすめの弾性ストッキングは?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月2日 9時26分

【日本版「足病医」が足のトラブル解決】#16

 ある日突然、片足が赤くむくんで痛い……。テレワークの普及で注意したいのが「深部静脈血栓症」です。長時間、足を動かさない姿勢を続けるとふくらはぎのポンプ機能が低下して血行が悪くなり、深部静脈と呼ばれる足の奥深くにある静脈内に血の塊(血栓)ができる病気です。初期の段階では血栓が膝下に生じる末梢型が多く、進行するにつれ血栓が太ももまで広がる中枢型になると、血の塊が血流に乗って肺へ運ばれ、肺塞栓症を引き起こして、最悪のケースでは死に至る危険があります。

 血栓を作らせないためには、こまめな足の運動や水分補給はもちろんですが、ほかにも「弾性ストッキング」の着用が効果的です。弾性ストッキングは主に弱圧、中圧、強圧の3段階に分けられ、深部静脈血栓症に対しては中圧のハイソックスタイプが有効とされています。

 下肢を圧迫して静脈を細くさせると、血流速度が上昇して血栓ができにくくなります。飛行機やバスなどでの移動は長時間、同じ姿勢が続くのでふくらはぎのポンプ機能がうまく働かなくなります。あらかじめ弱圧の弾性ストッキングをはいておくといいでしょう。

 深部静脈血栓症を発症した直後であれば、通常は抗凝固薬で血の塊を溶かす治療を行います。血栓がジャマをして深部静脈の血流が悪くなると、血液は皮膚の近くを走る表在静脈を流れるようになり、その静脈が太くなってしまいます。そこで、血栓を溶かす治療以外にも表在血管が太くなり過ぎないように足を締めておく中圧のハイソックスタイプの弾性ストッキングを約3カ月間はくように指導しています。

 注意したいのが無症候性の場合です。

 ある50代の男性は、1年ほど前から右ふくらはぎの内くるぶしに茶色いシミが生じてかゆいと皮膚科を受診しました。足の状態を診た医師に静脈の病気の可能性があると指摘され、当院を訪れ検査をすると、深部静脈の圧力が高い。問診で話を聞くと、30年前に米国旅行をした際、帰国後に右太ももがむくんだことがあるそうです。1カ月ほど経つとむくみも引いて痛みもないので特に気に留めず過ごしていたといいます。おそらく、その時に深部静脈血栓症を起こして血液の逆流を防ぐ弁が壊れ、慢性的に膝から下に血液がたまった状態が続いていると考えられます。その結果、血管がダメージを受け、2次性の静脈瘤を起こしたり、皮膚の色素沈着や潰瘍が現れる血栓後症候群を引き起こしていたのです。

 こういった患者さんでは強圧の弾性ストッキングを用いて傷の治療をした後でも、中圧の弾性ストッキング着用を継続してもらい、再び潰瘍ができない足の状態をつくる必要があります。

▽松原忍(まつばら・しのぶ)琉球大学卒業後、同大学胸部心臓血管外科教室へ入局。末梢血管疾患の診療に携わった後、横浜市立大学形成外科でリンパ浮腫に対する手術法を学ぶ。2020年から順天堂医院足の疾患センターでリンパ浮腫診療を開始。24年4月から現職。

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