【営業は2時間だけ】84歳が作る山奥の名物ラーメン店 大人気なのは「塩ラーメン」と「まぐろ丼」元寿司店の経験生かした味を...川を眺めながら堪能 奈良・吉野町
MBSニュース / 2024年5月1日 12時37分
奈良県吉野町の山合いを縫うように流れる吉野川のほとりでぽつんと営業する店『ラーメン河』。営業時間はたったの2時間。そしてメニューは「塩ラーメン」となぜか「まぐろ丼」?山の中で客が絶えない名店を定点観測しました。
84歳の元寿司職人である店主が毎日5時半から仕込み
まだ薄暗い午前5時半、店に向かいました。車のすれ違いが難しい細い道を進むと…
途中、野生の鹿に遭遇。大阪から2時間弱、緑色の建物が見えてきました。ここが『ラーメン河』です。
(長田さん)「おはようございます」
店主の長田亜起男さん、84歳です。
(長田さん)「ええ天気やね。ええ天気でよかった」
長田さんは店の2階に住んでいます。毎朝決まった時間に店に入り、1人でスープや具材の準備を始めます。
(長田さん)「90%鶏がらです。ちょっと豚を入れておきたいんで豚足を入れた」
チャーシューは宮崎県産のブランド豚を使用。
(長田さん)「豚の味を生かすのはやっぱり塩やね」
塩で味付けして、色付け程度に醤油を入れます。そして…
(長田さん)「これはまぐろ丼のまぐろです。元々寿司店をしていたからね」
長田さんは元寿司職人。30歳で独立して大阪・堺市内で寿司店を営んでいたそうです。最初はサービスでまぐろ丼を振舞っていましたが、元職人が作るまぐろ丼は大好評で、メニューに取り入れました。
(長田さん)「中にはこのまぐろ、どこで獲ってきたの?いや、前の川にいてるよって冗談で言ったら、本気にしている人がいました」
犬好きの妻のため移住…その後に独学でラーメンを研究して開店
長田さんがこの店を始めたのは16年前。経営していた寿司店は50歳で閉め、自然豊かな吉野に移住しました。その理由は亡くなった妻が大の愛犬家で、広い土地で犬を飼いたかったからだといいます。
それから10数年、夫婦で第2の人生を楽しんでいましたが、心境に変化が…
(長田さん)「昔からラーメン屋をやるのが夢だったんです」
夢を叶えるため独学でラーメンの味を研究。店をオープンしました。仕入れのために毎週、大阪・鶴橋の市場に足を運びます。
(長田さん)「おはようございます」
馴染みの店をまわり、自分の目で確かめ買っていきます。
(長田さん)「ゆず10個」
(店の人)「これ1個サービス」
店は口コミで人気になりミシュランに掲載されるほどの名店になりました。
開店前に続々と訪れる客
午前9時 開店までまだ1時間ありますが、もう1人がやってきました。
(長田さん)「どちらから?」
(客)「京都」
(長田さん)「京都から!京都に有名なラーメン屋さんありますやん。2軒並んだ」
(客)「あるんですけどね。こういうロケーションがいいなと思って。(Qまだ朝9時ですが?)ちょっと遅かったなと思って。でも今日は少ないのかな。口コミ聞いたら時には8時過ぎにでも客が来ると。9時半だったら売り切れの日もあるとか」
休日ともなればオープン前でも行列ができているそうですが、この日は少しゆっくりめのスタート。でも1人目を皮切りに次々と客がやってきます。
バイクで訪れる方々もいました。
(客)「7人で。(Qどこまでツーリングに行く?)ここに。ラーメンを食べに来たんです。(Q朝早いですけど?)10時からですから。早く来ないとなくなっちゃうんで」
『ラーメン&まぐろ丼』に客は舌鼓 長田さんは一人で大忙し
午前10時、開店の時間。すでに22人が待っていました。営業は正午までの2時間。長田さんはラーメンができあがると、3杯のラーメンを一度に持って運びます。
(長田さん)「すいません、長いこと待っていただいて」
客席は9席。川を見ながら最高のロケーションでいただきます。
(客)「スープがおいしい。スープばっかり飲んじゃう」
(客)「来たかいがありました。おいしいです。ラーメンだけにしようかなと思っていたけど両方頼んで正解ですね」
ほとんどの客がラーメンとまぐろ丼をセットで注文。元寿司職人が作ったどんぶりに舌を鳴らします。
(客)「まぐろ丼の酢飯もおいしいですね」
お客さんが食事を楽しむ一方で長田さんは大忙し。
調理や接客、洗い物など、あらゆることをすべて一人でこなします。
(長田さん)「ずっと休んでないでしょ。いつもこんなんよ」
そこに『助っ人』が登場 二人三脚で営業を乗り切る
午前11時、山の中とは思えない賑わい。ライダーも多く、他府県ナンバーが目立ちます。
(長田さん)「ありがとうございます。気を付けて、キーをつけて」
(客)「また来ます」
冗談を言いながらも慌ただしく働く長田さん。と、その時…
(男性)「お父さん帰ってきたで」
(長田さん)「お帰りお帰り。まだかなまだかなと待ってたんや」
突然、男性が厨房に入ってきました。
(長田さん)「(Qお手伝い?)お手伝いじゃない、お客さんなんです。お客さんであって友達であって」
京都から来た常連さん。長田さんの力になろうと毎週手伝いに来てくれているのです。
(男性)「従業員みたいやな」
男性は初めて訪れた際に長田さんが一人忙しく働いている姿を見て 居ても立ってもいられなくなり厨房に飛び込んだそうです。
(男性)「忙しくしてはるので、遠慮なしに入ってきて。(Q手伝うと言って?)いやもう全然そのままダイレクトに。怒られたら怒られたときで」
(長田さん)「(Q助かりますか?)助かるどころか、非常に助かる」
二人三脚で営業終了まで乗り切ります。
40食が2時間で完売 長田さん「何歳になっても現役でやります」
正午、この時間も客が途切れることはありません。この日の26組目。
(客)「もう終わりました?」
(長田さん)「はい…すいません」
(客)「残念。(Qどちらから?)大阪です。ここを目的に来たんですけれど残念でした」
(客)「また日にちを変えて」
せっかく来たのに食べられず…残念。用意していた40食は2時間で完売。営業が終了しました。
(長田さん)「ありがとうございます」
営業が終わっても一息つく間もなく、翌日のスープ作りに取り掛かります。まったく年齢を感じさせません。
(長田さん)「自分で年寄りとは思ったことないんです。自分で年寄りと思ったら年寄りになってしまうでしょ。何歳になっても現役でやります」
84歳の現役店主。人気の秘密は味だけでなく、店主の人柄にもあるのかもしれません。
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