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「コンビニ弁当こそ長寿食」の意外な真実…医師・和田秀樹「高齢者の健康リスクを減らす食生活の特徴」

プレジデントオンライン / 2023年12月15日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CandyRetriever

高齢者の食生活は何に気をつければいいか。医師の和田秀樹さんは「年をとればとるほど『栄養があまる害』より『栄養が足りない害』のほうが大きい。粗食はストレスにつながり、免疫機能にも悪影響をおよぼし、病気やがんの発症率を高める。リスクをとりたくなければかたよらず何でも食べることだ。その意味でコンビニ弁当は非常にバランスよく栄養を摂れる長寿食である」という――。

※本稿は、和田秀樹『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。

■戦後、結核になる日本人が減少した理由

戦前は世界でもっとも短命だった日本が長寿大国になったのも栄養のおかげだと思います。戦前はなぜ短命だったのかというと、日本では結核が命とりとなっていたのです。

1950年前後に結核は治まり、脳卒中が死因のトップになるのですが、ストレプトマイシンという薬ができたから結核で命を落とす人はいなくなったのだ、というのが医者の認識。

でも実際にはストレプトマイシンは結核の治療薬であって、結核にならないための予防薬ではありません。当時、ストレプトマイシンが高価だったこともあり、そんなに普及しなかったなか、戦後、結核死が減ったのは、結核になる人が激減したからです。

だったらどうして結核になる人が減ったのかというと、米軍が配った脱脂粉乳によって日本人のたんぱく質摂取量が画期的に増えたからでしょう。

栄養状態がよくなり、免疫力がついたというのが真実です。戦前だって結核には卵がいいとされていたのです。ただ、予防効果はともかくとして、結核になってからの治療としては栄養だけでは非力でしたが。

脳卒中についても、医学界では血圧を下げる薬ができたおかげで脳内出血が少なくなったから患者が減少したというのが通説ですが、調べてみると、昭和30年代、40年代は血圧が150mmHg程度の人でも脳内出血を起こしていたのです。

■「ビタミンの父」が開発した豚肉入りの海軍カレーの効果

今は150mmHg程度で脳内出血を起こすことは、ほぼありません。

ここでも活躍したのはたんぱく質なのではないかとわたしは睨んでいます。

それまで日本人の血管はゴムの入っていないタイヤのようなものだったところ、たんぱく質をとるようになって血管が丈夫になったのではないかと。

日本人が長生きできるようになったのは8割方(おそらくはそれ以上)は栄養の賜物だといえるのです。

これを考えないのは、昔からのことです。

日露戦争のときに陸軍の軍医の責任者だった森林太郎、別名・森鴎外は、脚気は伝染病だと信じていました。だから軍人の食事を変えることはありませんでした。

一方、海軍の軍医の責任者だった高木兼寛は、欧米では脚気はほとんど見られないということに気づき、豚肉に着目します。

豚肉を食べれば身体も大きくなるし、脚気も減るのではないかという仮説を立てたのです。

そこで豚肉入りの海軍カレーを開発し、豚肉カレーが日本人のあいだに広がった。

カレーライス
写真=iStock.com/Rie Tamaoki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rie Tamaoki

豚肉に豊富に含まれるビタミンB1の効果は絶大で脚気の撲滅につながったことから、高木兼寛は「ビタミンの父」として知られています。

栄養状態がいい人ほど長生きするというのは経験的には事実です。

■高齢者ほど「栄養が足りない害」のほうが大きい

わたしは高齢者専門の精神科医として患者さんと向き合った経験から、年をとればとるほど「栄養があまる害」より、「栄養が足りない害」のほうが大きくなると断言できます。

中高年のあいだは「血圧が高いなら塩分のとりすぎに注意しましょう」「糖尿病があるなら甘いものは控えましょう」といわれたら、「そうですね」ということでもいいかもしれません。

でも高齢者になったら鵜呑みにしてはいけません。年をとると若いころより腎臓の機能が落ちるため塩分などがおしっこからたくさん出るようになるため、低ナトリウム血症を起こしやすくなります。

これがひどくなると、意識がもうろうとしたり、けいれんを起こしたり、死にいたることもあります。

■60歳以上の5人に1人がたんぱく質不足

過度な食事制限は低栄養、低カロリーを確実に招きます。すると代謝が悪くなり、エネルギー源であるブドウ糖をうまく活用できなくなるため、脂肪が体内に蓄積する。

つまり食べていないのに太るのですが、太ったからとダイエットをすると、さらに代謝が悪くなる。この悪循環の先に待ち受けているのが新型栄養失調症です。

あまり知られていないことですが、日本では60歳以上の5人にひとりがたんぱく質の欠乏などによる新型栄養失調症だといわれています。いきすぎた生活指導の影響であることは疑いようもありません。

粗食はストレスにつながり、免疫機能にも悪影響をおよぼすため、風邪をひきやすくなったり、うつになりやすくなったり、日本の死因トップであるがんの発症率が高まります。

つまり肥満やメタボを気にして食べないというのは非常に危険な行為なのです。肉は避けて魚中心で、なんなら野菜オンリーでなどと考えるのもナンセンス。

ベジタリアン(菜食主義者)やビーガン(卵や乳製品も食べない完全菜食主義者)は短命であるといわれています。おそらく豆などでは十分なたんぱく質をとることができないのでしょう。

色どり鮮やかなサラダ
写真=iStock.com/sasirin pamai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sasirin pamai

■コンビニ弁当は栄養バランスの良い長寿食

とはいえ、いろいろ試した結果、それが自分に適した健康法なのだというかたは貫くべきでしょう。

わたしだって「その血圧ではマズイよ、その血糖値じゃ死ぬよ」といわれても、自分のやりかたを変える気はないのです。

でもリスクをとりたくない人にとっては、「かたよらず、何でも食べる」ことこそが大切だとわたしは考えています。どんなものでも足りない害があるからです。

とくにその害が大きくなる高齢者には、質素な食事より、バラエティに富んだ幕の内弁当をおすすめします。

おそらく、20~30種類の食材を使っているのではないかと思うのですが、あれほどの種類のおかずを家でつくることはできません。

その意味ではコンビニ弁当も非常にバランスよく栄養をとりいれることができる長寿食だといえるでしょう。

わたしは好んで食べていますが、添加物が入っているのではないか? 加工食品を使っているのでしょう? と難色をしめす人もいるようです。

でもたとえば発がん性にしても、確率的には1万分の1の単位です。

■納豆のタレと同じで気にする問題ではない

納豆は健康食として人気で、毎日欠かさずに食べているという人も多いのではないでしょうか。

和田秀樹『病気の壁』(興陽館)
和田秀樹『病気の壁』(興陽館)

たしかに納豆には、筋肉などの組織をつくる「たんぱく質」、活動に必要なエネルギーや神経組織をつくる「脂質」、主要なエネルギー源となる「炭水化物」、酸素を活性化する働きのある「ビタミン」、歯や骨などの骨格をつくり、人体の機能調節や生命維持に欠かせない「ミネラル」といった5大栄養素が含まれています。

ただし納豆にもれなくついてくるタレや練り辛子には添加物が入っているのでは? それでも口に入れた途端に即死したという話は聞いたことがありません。

それに、仮に食品添加物に発がん性があったとしても、がんになるのは10~20年後です。

20年後に生きていたとしても若いころに比べて体力のなくなった高齢者の場合、がんの進行ものんびりとしているので、それほど気にする問題ではないとわたしは思います。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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