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秋田水害、住宅修理進まず、800世帯が越冬の危機 困窮する被災者、なぜ支援は届かないのか?

東洋経済オンライン / 2023年11月16日 10時0分

前出の会議で配付された報告書では、NPO法人から「支援制度に関する相談・支援が必要な世帯=37.3%」という指摘もなされた。同報告書には、「冬を越すために、今使える支援を最大限使えるようにすることが大切」「応急修理制度、みなし仮設、公費解体制度の柔軟な運用が求められる」との記述もある。

現在、秋田市が秋田市社会福祉協議会とともに取り組んでいる戸別訪問活動では、暖房器具や寝具のニーズ調査とともに、支援制度の周知やその利用を促すことも重要な目的の1つとなっている。市の職員が賃貸型応急住宅や応急修理制度などの内容を記したチラシを配付し、「支援制度の申請はお済みですか」などと声をかけている。

ただ、さまざまな制度がある一方で、周知が不十分で対象者が限定される制度も多いことから、前出の女性のように「いったい何が使えるのかわからない」という声は少なくない。各種支援制度を担当する部署がばらばらで、縦割りになっていることも、利用が進まない一因になっている。

たとえば秋田市では、住宅整備課が賃貸型応急住宅を担当。住宅の応急修理は都市総務課が、被災者生活再建支援制度は福祉総務課がそれぞれ所管している。

1つの部署に業務が集中し過ぎないようにするためと見られるが、被災者にしてみれば、住宅の再建1つにしても、さまざまな課を渡り歩いて自分に合った支援策を探し出さなければならない。これとは別に秋田県の支援メニューもあり、別に問い合わせが必要だ。

秋田市の場合、「被災者台帳」が未整備であることも、支援策が行き届かない一因になっている。

同台帳は地方自治体が保有する被災者に関するさまざまな情報を一元的に統合し、支援の漏れを防ぐことを目的としている。東日本大震災の教訓を踏まえて2013年の災害対策基本法改正によって、「市町村長は作成することができる」と定められた。しかし、秋田市の場合、災害発生から4カ月が過ぎているのに、いまだに被災者台帳は作成できていない。市によれば、そのメドも立っていないという。

被災者台帳には、被災者の氏名や生年月日、住所、住宅の被害状況、要配慮者であるか否かなどの個人情報とともに、罹災証明書の交付、住宅の応急修理など援護の実施状況などを盛り込むことができる。内閣府の説明資料によれば、マイナンバーを活用することで「総合的かつ効果的な被災者への援護の実施」につなげられるとされている。

もっとも、被災者台帳の整備が遅れ、災害が起きた後も場当たり的に対応している自治体は少なくない。こうした問題は秋田市に限ったことではない。

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