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いったい「異次元緩和」をする必要はあったのか? 「壮大な実験」の失敗ではっきりしたことは何か

東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時30分

「異次元緩和」「イールドカーブコントロール」「ETFやJ-REITの買い入れ」をいっぺんにやめ、「普通の金融政策」に移行した日銀の植田総裁。筆者は「すでに金融正常化は実現した」と評価する(写真:ブルームバーグ)

すばらしい。

【写真】2013年4月、黒田東彦日銀総裁(当時)は就任早々、異次元の金融緩和策を打ち出した。

植田和男・日本銀行総裁は期待どおり、「腹を据えて静かに闘う」という彼の本領を発揮し始めた。

いっぺんに「イレギュラーな政策」をやめた植田総裁

3月18~19日の日銀政策決定会合で、日銀はマイナス金利を解除しただけでなく、異次元緩和を一気に終了してしまった。ついでに、これまでの大規模緩和の中で最も異常な枠組みであるイールドカーブ・コントロール(=YCC、長短金利操作)、さらにはETF(上場投資信託)およびJ-REIT(不動産投資信託)の買い入れまでも、いっぺんにやめてしまったのだ。

これまでの数年間、われわれを含めた外野は、金融政策正常化の道筋として、この3つのイレギュラーな政策をどのように、どの順番で解除していくのか、散々議論してきた。それを事もなげに、3つ同時にやめてしまった。記者会見で、新しい金融政策の枠組みをなんと名づけるか、コメントを求められ、「普通の金融政策です」と。

カッコいい。

しかし、まさにそのとおりだ。これこそが正常化だ。ある意味、量的緩和も半分は終わったといえる。あるいは、植田総裁の頭の中の枠組みでは、もはや量的緩和ではないのかもしれない。

実際、マネタリーベースの拡大に関する「オーバーシュートコミットメット」は外された。植田総裁の言う「短期金利を操作手段とした普通の金融緩和」になったのだから、マネタリーベースを目標とする量的緩和(日銀による元祖量的緩和)は終了したのだ。

あとは、日銀が国債などのリスク資産を抱えるバランスシートポリシーをどうするかだ。現在ではこれが量的緩和だと思われているが、アメリカのベン・バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)元議長は、自身では決して量的緩和という言葉を使わず、バランスシートポリシーと呼び続けた。まさに今、日銀はこの政策による、バランスシートに残ってしまっている遺産をどう処理していくかということが残っているのである。

したがって、量的緩和は終了し、日銀は長期国債を一定程度買い続けるが、それはあくまで緩和ではなく、過去の遺産の処理のための調整手段だから、これからは「普通の金融緩和」と過去の負の遺産の処理(まさに負債処理)のみ、ということだ。

これから日銀は何をするのか

つまり、正常化をもう実現してしまったのだ!

メディアや金融関係者は「正常化はまだ第一歩にすぎず、これからの道のりは長い」などと言っているが、植田総裁も、私と同じように正常化は終わったと考えているのではないか。記者会見では、「正常化が何を意味するかによるけれども」と留保条件をつけ、はっきりと正常化が終了したとは言わなかったが、彼の説明の全体を見渡すと、「普通の」というのは正常化したあとの姿ということではないだろうか。

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