“4強”から“スシロー1強”へ? 回転寿司業界の動向

2019年4月12日公開

かつて「しのぎを削る回転寿司4強の戦い」などと題して回転寿司大手4チェーンの比較などをまとめたページを作っていましたが、最近では業界1位のスシローが絶好調で独走、2位のくら寿司が失速気味で「スシロー1強」の構図となりつつあり、ここ1年くらいは“覇権争い”を伝える記事も大幅に減ってきている回転寿司業界。そんな中でも各社ともに工夫をこらし、常に魅力ある施策を講じています。“4強”の業績や動向を中心に、回転寿司業界の最近の話題などをまとめました。

スシロー

既存店売上高は17カ月連続でプラス成長

全店売上高は22カ月連続プラス

回転寿司業界でトップをひた走るスシロー。売上高などの各種数値で相変わらず好調をキープしています。

2019年4月2日に更新されたスシローグローバルHDの2019年3月既存店売上高は、対前年同月比で103.5%のプラス成長でした。
内訳は客数が101.9%、客単価が101.5%。また、全店売上高も108.4%であり、既存店・全店ともにプラス成長となっています。
既存店売上高の今期3月までの上期は、全ての月でプラス成長を果たしました。また客数、客単価ともに毎月プラスで推移しています。ただし既存店売上高の成長は、10月(110.7%)をピークに、徐々にプラス幅が縮小している状況です。
また全店も既存店同様、上期は全ての月でプラス成長となっています。

好調の背景…サイドメニューにも寿司にも注力

店舗運営コンサルタントの佐藤昌司氏は、スシローが好調な背景として(不調なくら寿司との比較の中で)サイドメニューにも“本筋”の寿司にも注力している点を挙げています。

スシローはすしの販売を強化したほか、話題性のあるサイドメニューを投入したことが奏功した。サイドメニューの中ではスイーツが好評だったという。17年11月にスイーツ開発プロジェクト「スシローカフェ部」を発足し、スイーツメニューの強化を図った。それが実を結び、女子高生など従来取り込めていなかった客層を取り込めるようになったという。
スシローは17年11月から、全国各地で水揚げされた魚を羽田空港経由でその日のうちに届ける飲食店向けオンラインマーケット「羽田市場」を活用して鮮度の高いネタの提供を始めた。これは本筋であるすしのおいしさをアピールすることにつながっている。

フェア回数の増加も好調の一因

ある回転ずしチェーンの幹部は「ここ数年のスシローの攻勢はものすごい。一気に差をつけられた印象だ」と吐露する。事実、スシローの3~4年前のフェアの回数は月1.5回程度だったが、現在は月2回へと増やしたことで、客数増加の一因になっている。

会計時の混雑緩和のためにセルフレジ導入を推進

QRコード決済への対応も

スシローグローバルホールディングスの経営企画部で主任を務める竹中浩司氏のインタビュー記事によると、スシローでは「来店前・中・後」の3つそれぞれのフェーズで、より良いサービスを提供できるように施策を検討・展開しているといい、来店中(店舗内)のフェーズでは…

具体的な施策として、スシローでは特にレジ周辺の混雑緩和のために一部店舗でセルフレジを導入し始めています。ピーク時はお会計待ちのお客様、来店のご案内待ちのお客様、そしてお持ち帰り用のお寿司を待っているお客様がレジ前の空間に集中するため、大変混雑します。セルフレジを導入することでこのレジ渋滞をなくし、ご来店いただいたお客様に最後までご満足いただけるように取り組んでいます。決済においても、QRコード決済への対応を進めているところです。

LINE Payでの支払いが可能に

今後は全店へ拡大していく予定

上で紹介した施策の一環だと思いますが、「LINE Pay」や「au PAY」への対応が、つい最近のトピックとして注目されています。

あきんどスシローは3月27日、回転寿司店の「SUSHIRO大森駅前店」と「同荻窪店」にスマートフォン決済サービス「LINE Pay」をセルフレジに先行導入し、4月9日には約200店舗で対応できるよう拡充すると発表した。
今後は、「LINE Pay」の導入をスシロー全店へ拡大していく予定となっており、店舗の導入状況はホームページで公開される予定。
4月9日からは、「LINE Pay」に対応した店舗で使える200円クーポンを先着50万名に配布するキャンペーンを実施する。

4月9日にサービスがスタートしたau PAYの対応店舗にもスシローが入っています。

2月5日・6日に約500店で一斉休業

スシローグローバルホールディングスは2019年2月5、6日の2日間、ほぼ全店にあたる約500店で一斉休業を実施しました。従業員からの要望もあり、働きやすい環境づくりにつなげるため、利用客への影響も考慮したうえで、この時期に一斉休業の形を採った格好です。

2日で10億円の機会損失でも…

この記事では「スシローの場合、年間売上高は約1748億円。単純計算で2日休めば10億円の機会損失が発生」するといい、それでも一斉休業に踏み切った背景には人材不足の問題があると指摘。さらに、「儲かって儲かってたまらない」好業績のスシローだからこそ一斉休業が可能だったとしています。

既存店客単価の伸びは2.3%増と微増なのに対し、既存店客数が5.1%増ということで売り上げ高成長を支えています。客数の増加が売り上げ成長の主要因だということは、店舗の側から見れば忙しくて忙しくてたまらない状況ということになります。
ここが、スシローが一斉休業に踏み切ったポイントです。業績的には絶好調なので休みを入れる余裕がある。その一方で、店舗は労働量が増加傾向にあるため休みを入れないと現場の疲弊感が強い。こんな状況です。

“平成最後の大放出” 計12日間限定の大還元フェア開催中

第一陣は4月10日~ 第二陣は4月16日~

“平成最後の大放出”と題し、4月10日より合計12日間限定の大還元フェアを全国のスシローにて開催。

『平成最後の大放出!6日間の全力決戦』の第一陣は4月10日(水)~15日(月)まで開催し、平成を代表する“大切り”“てんこもり”ネタの『大切りまぐろ』、『えび3貫盛り(ボイル・生・甘えび)』、『いくらてんこ盛り』などスシローの大人気商品を、さらにパワーアップさせてご提供いたします。
第二陣は4月16日(火)~21日(日)まで開催し、『ダブル生サーモン』、『特大ジャンボ赤えび』、『鮪とろ たたき身てんこ盛り』など第一陣の勢いそのままに、価格の限界に挑戦した商品を取り揃えました。

新作スイーツも登場

“平成最後の大放出”第一陣のスタートと時を同じくして、数量限定の新作スイーツ「とろっとプリンどら焼き」「抹茶すぎるパフェ」も発売されています。

「とろっとプリンどら焼き」は、どら焼きの皮でスシローの人気デザート「とろっとプリン」といちごを挟んだスイーツです。かぶりつきたくなるのを我慢してスプーンでいただくのがオツとのことです。
「抹茶すぎるパフェ」は京都の老舗宇治抹茶問屋「宇治 丸久小山園」の抹茶を使用したぜいたくなデザートです。濃さの違う2種の抹茶アイス、京都嵯峨野の有名わらびもち店「峯嵐堂」の抹茶わらび餅、抹茶ムースが入っており、4種類の抹茶が食べ比べできます。

ピスタチオ使用の贅沢パフェを期間限定販売

SNS映えもバッチリ

スシロー各店では2019年3月20日から、「ピスタチオのルビーパフェ」が期間限定で販売されています。
「ピスタチオのルビーパフェ」は、鮮やかなグリーンが特徴の食材「ピスタチオ」をふんだんに使用した贅沢なパフェ。スシロー初のオリジナルピスタチオアイスは、ピスタチオをロースト加工することで生まれるしっかりとしたコクと、優しい甘さが特徴で、甘酸っぱいベリーアイスとの相性も抜群だそう。

「大阪ミックスジュース」も同日発売

同日より、初の全国販売となるスシローオリジナル「大阪ミックスジュース」も登場した。バナナ、もも、りんご、みかんを使用しており、果肉感をしっかりと残した濃厚な口当たりが特徴の同商品。喫茶店のミックスジュースをイメージした、どこか懐かしい味わいに仕上がっている。食後の一杯にもオススメ。

両商品とも、なくなり次第終了となります。

くら寿司

一人負け? さえない業績

既存店売上高は5カ月連続のマイナス

業績好調のスシローとは対照的に、くら寿司の最近の業績は思わしくありません。

回転ずしチェーン「無添くら寿司」を運営するくらコーポレーションの業績がさえない。3月15日に発表した2月の既存店売上高は、前年同月比6.2%減の大幅減収だった。客数は6.1%減、客単価は0.1%減。不適切動画問題が大きく影響したとみられる。
2019年10月期のこれまで既存店売上高はどう推移してきたのでしょうか。
今期は4カ月が経過しましたが、既存店売上高は全ての月で対前年同月比マイナスです。11~12月は98〜99%を維持していたものの、1〜2月は93%台にまで落ち込みました。

4月5日に発表された月次報告では、3月の既存店売上高も前年同月比5.3%減で、5カ月連続のマイナスとなっています。

18年10月期決算は堅調だった

2018年10月期決算は売上高1324億円(前期比7.9%増)、本業の儲けを示す営業利益は68億円(同8.4%増)といずれも過去最高を記録。国内の既存店売上高が前期並みを保ったほか、海外店舗が好調に推移した。

業績不調の原因は?

理由その1 サイドメニューの競争力の低下

くら寿司が不調なのは、競合に顧客を奪われているためだ。なぜそんなことが起きているのか。最大の理由は、サイドメニューの競争力の低下だ。
くら寿司は12年のラーメン発売を皮切りに、サイドメニューの強化を図った。13年に天丼とうな丼、14年には豚丼、15年にはカレーライス、16年にはカレーうどんと牛丼を売り出している。最近では、3月からハンバーガーの販売を始めた。
くら寿司は、回転ずしチェーン業界における、サイドメニューのパイオニアといっていいだろう。当初は物珍しさから、サイドメニューで集客を実現できていた。だが、次第に競合も同様の施策を打ち出してきた。

理由その2 施策がインパクトに欠けていた

上のサイドメニューの話と多少重複しますが、スシローのサイドメニュー(特にスイーツ)の強化、かっぱ寿司のロゴマーク刷新や「食べ放題」の実施、はま寿司のご当地料理キャンペーンなどに比べ、くら寿司の施策はイマイチだったという指摘も。

くら寿司以外の大手回転ずしチェーンは特色のある打ち出しを継続して実施できていた。一方、くら寿司の打ち出しを見てみたが、この1年ほどは特筆できるものを見つけることができなかった。スシローとはま寿司、かっぱ寿司と比べてインパクトに欠けていた感が否めない。
こうして、スシローとはま寿司、かっぱ寿司の競争力が高まったことで、くら寿司は相対的に競争力を失ってしまった。それが一因で客離れが起きたと考えられる。

理由その3 寿司の競争力も低下

スシローやかっぱ寿司がネタや味の向上を積極的にアピールしたのに対し、くら寿司は埋没してしまった印象があるようです。

そして重要なのは、くら寿司では本筋であるすしの競争力も低下していることだ。
もちろん、くら寿司もすしの品質の強化を図ってはいる。だが、サイドメニューの話題が先行してしまい、すしの品質を十分に伝えきれていなかったように思える。

業績にも影を落とした“バイトテロ”が大きな話題に

アルバイト従業員が不適切動画を投稿

2月5日、回転寿司チェーン店のくら寿司の守口店のアルバイト店員がゴミ箱に廃棄された魚の切り身を、ゴミ箱から拾ってまな板に載せなおした動画が投稿された。調査の結果、実際に廃棄された切り身が顧客に提供された事実はなかったようだが、衛生面で特に配慮が必要な生魚を扱う店舗としては致命的とも言えるイメージダウンだ。

「当社が一石を」法的措置の準備に入ったと発表

8日にくら寿司を運営する「くらコーポーレーション」は動画投稿に関わったアルバイト店員2人に対して法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表した。
くらコーポレーションは法的措置を検討するに至った理由について「上場企業としての責任を果たす」「約3万3000人の従業員の信頼回復」といった理由に加え、「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影した SNS の投稿に対し、 当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、 抑止力とする為」としている。

「くらバーガー」に衝撃走る

“寿司屋が本気で作ったハンバーガー”

ここまでネガティブなものとは話が変わって、くら寿司自慢のサイドメニューに関して巷に衝撃を与えたビッグニュースがありました。

「無添くら寿司」が、またもや“意外すぎる商品”を世に出した――。
3月1日、くら寿司は回転ずし業界で初めてとなるハンバーガーを発売する。今回売り出すのは2種類のハンバーガー。「KURA BURGER フィッシュ」は国産天然魚を100%使用した魚肉の自家製パテに、テリヤキソースやマヨネーズで味付けをし、タマネギの天ぷらやサンチュをバンズでサンドした。もう1つの「KURA BURGER ミート」は独自ブレンドで仕上げたパテを使用し、シンプルなケチャップベースのソースやマヨネーズなどをバンズで挟んだ商品。価格はいずれも250円(税抜き)という設定だ。

レギュラーメニューとしての販売は業界初?

これまで、回転寿司でハンバーガーを取り扱ってきたお店といえば、スシロー。鯖とシャリ(!)を挟んだ「鯖バーガー」に、ハワイアンな「スパイシーカジキかつバーガー」などを発売して度肝を抜いていましたが……。
くら寿司調べによると、大手回転寿司でハンバーガーが “レギュラーメニュー” として販売されるのは、今回が初とのこと。

バンズに寿司屋ならではのこだわり

和の要素もしっかり盛り込まれており、バンズには米粉と黒酢(!)を使用した「シャリバンズ」を使っていたり、トッピングにフライドオニオンならぬ「玉ねぎの天ぷら」を使っていたりと、くら寿司ならではなこだわりも見てとれるんです。

「食品ロス」解消の目的も

フィッシュハンバーグ状のパテに「大きな秘密」がある。
実はこのパテは、寿司ネタになる魚のうち「ネタに使えない中落ちや切れ端」など余った部分で作られたもの。これまで、そうしたものは一部が店内で加工されて提供されていたものの、多くが捨てられていたという。くら寿司はハンバーガーを販売することで大きな社会問題となっている「食品ロス」の解消に取り組もうとしているのだ。
「くら寿司」の広報担当者・辻明宏さんは、「ハンバーガーを開発したことで、魚の骨まで使うことができるようになり、原材料の無駄を完全になくすことができた。これは、利益を伸ばすことにつながる。今後は、1カ月100万個の販売を目指す。現在、売れ行きは好調で、目標達成が期待できる」と話した。

「KURA BURGER ミート」のお味は…?

風味はケチャップ味で、パテが薄い。その影響か、口の中はケチャップの味でいっぱいになる。すし屋のバーガーだから、ミートに醤油ベースのソースかと想像していたが、あっさりと裏切られた。誰でも食したことのあるケチャップという味付けをしたのは、おそらく、くら寿司がすし屋であると共に、和食も洋食も、イタリアンもスイーツも提供するという、ファミリーレストランという自負の表れではないだろうか。

「KURA BURGER フィッシュ」のお味は…?

ミート同様に、薄いパテに味付けされたのはテリヤキソース。10種類以上のブレンドスパイスも効いているが、ソース好きな関西人ではないため、変化を求めてわさびやガリをアレンジしてみた。テリヤキソースには、からしより、ピリッとしたわさびが合う。また甘酢のガリをアレンジすることによって、玉ねぎのリングが少し深みのある風味になっていく。確かに、他のバーガーショップにないテイストだ。

「旬の極みシリーズ」第2弾開催中

第2弾は“業界一”の「厚切り桜鯛」

「桜鯛」は桜の咲く3月から4月に獲れる、産卵期前の真鯛です。身体に栄養を蓄えることから脂乗りが良く、この時期にしか食べられない旬の味覚です。また、おめでたい象徴の魚として、高価格で取引されています。その「桜鯛」の中でも、最も美味しいとされる2キロ前後の魚体を厳選。冬の寒い時期にも産卵に向けしっかりと餌を食べているので、脂の乗りが良く、程良い弾力がある食感が魅力です。さらに、口から溢れんばかりの「厚切り」にてご提供することで、より桜鯛の旨味をご堪能いただけます。

4月12日より毎年好評の「夏季限定メニュー」が早くも登場

4月12日(金)より、くら寿司自慢の「麺シリーズ」も販売開始!毎年大好評を頂いている夏限定メニュー「冷やし中華はじめました」「すしやのシャリカレーうどん」が販売開始。さらに担々麺を冷静スープで楽しむ!新商品「本格!!冷やし担々麺」が夏季限定メニューに仲間入り。

高級ネタのフェアに大きな反響

「幻の魚」クエ、大間マグロ、ノドグロ…

上でも紹介した「旬の極みシリーズ」の第1弾(3月15~21日)は、「幻の魚」とも呼ばれる高級魚クエを200円(税抜)で提供するという太っ腹なフェアで、多くのメディアが取り上げるなどして話題に。ほかにも1月には「大間のまぐろ」、2月には「のどぐろ」「本ずわいがに」と高級ネタを期間限定で投入し、特に大間のまぐろはフェア開始後すぐに完売になるなど、大きな反響がありました。

バレンタインの時期には「チョコぶり」も話題に

目玉メニューは、今回世界初の一般販売となる「チョコぶり」。チョコレートを混ぜた餌を与えて養殖したブリで、通常のブリよりも見た目の劣化が遅いのが特徴だ。
記者が試食したところ、チョコレートの風味や甘さを感じることはなかった。ただ通常のブリだと水揚げ後2日で変色してしまうところを、「チョコぶり」はチョコレートに含まれるカカオポリフェノールの抗酸化作用により5日間、色鮮やかな見た目に保つことができる。

かっぱ寿司

既存店売上高は3カ月連続のマイナス

18年度の全店舗の客数はすべての月でマイナス成長

イメージの刷新や食べ放題の実施などで一時は「回復基調」とも伝えられていた「かっぱ寿司」ですが、直近の数値はあまり良くないようです。

2019年4月2日に更新された、カッパ・クリエイトの2019年3月の既存店売上高は、対前年同月比99.6%で3カ月連続のマイナスとなりました。
2019年3月期のこれまでの既存店売上高はどう推移してきたのでしょうか。
既存店売上高はプラス月が6カ月、マイナス月が6カ月と半々の状態です。ただし客単価のマイナス月が3カ月であるのに対し、客数のマイナス月は9カ月と、客数のマイナスが既存店売上高に響いています。
一方で全店舗ではプラス成長を果たしたのは6月のみ。客数は全ての月でマイナスとなりました。

「業績悪化に歯止めの兆し」との見解も

かっぱ寿司はここにきてようやく業績悪化に歯止めがかかるようになった。直近通期の18年3月期の既存店売上高は前期比1.7%減とマイナスだったものの、マイナス幅は以前と比べて縮小している。17年3月期(4.2%減)や16年3月期(4.2%減)、15年3月期(4.0%減)と比べると健闘しているといえるだろう。
そして今期(19年3月期)は前年同月を上回る月が目立っており、1月までの10つの月のうち6つの月がプラスとなっている。

16年から「おいしくない」イメージの払拭に努める

最近は出遅れていたサイドメニューも強化

業績が悪化していたかっぱ寿司は16年にロゴマークを刷新するなどのイメージチェンジを図った。その後、「食べ放題」を実施したり、1皿1貫を税別50円で提供するなど、話題性のある試みを次々と打ち出していった。最近は、出遅れていたサイドメニューの強化も図っている。こういった施策が奏功し、業績が回復するようになった。
かっぱ寿司は「すしがおいしくない」とされて客離れが起きていたが、女優の吹石一恵を起用し、「やる、しかない」と味の向上をイメージさせるテレビCMを放送するなどして積極的にアピールしてきた。筆者の主観ではあるが、今のかっぱ寿司は、以前に比べて圧倒的においしくなっている。

大人も十分に満足できる「食べホー」

メニューは80種以上 寿司以外に麺類やデザートも

2017年6月に一部店舗限定で開始され、大きな話題となった食べ放題。18年2月からは全店舗で実施され、すでに定着した感も。また、評判も上々のようです。

寿司を腹いっぱい食べたいときにオススメなのが「かっぱ寿司」の「食べホー」。60分食べ放題で男性1580円、女性1480円(共に税抜き)。麺類やデザートもあり満足感が高いと評判だ。
注意したいのは、食べホーの対象はすべてのメニューではないこと。とはいえ、その数80種以上!
食べホーのメニューはお寿司だけではないんです。サイドメニューのラーメンやうどん、ポテトや唐揚げ、たこ焼きなどの一品料理、デザートの杏仁豆腐、バニラアイスやチーズケーキなどもあって、お寿司目当てでなくても十分楽しめる内容になっています。
また、食べホーはドリンクバー付きなのもうれしいところ。

4月10日より「天然鮪と春の旨いネタ」フェア開催

本フェアの目玉商品は『天然鮪中とろ』です。強い旨みと深みのある味わいに加え、口に入れた瞬間とろけ出し、サシと赤身が絶妙なバランスです。他にも、深い赤色の身が天然の証『天然鮪上赤身』と、ねっとり食感が食欲をそそる『天然鮪上赤身漬け』をご用意。四種のラインナップで天然鮪をお楽しみいただけます。
そして、春の旨いネタは、はまぐりや天然びん長まぐろ、とろ鯖など多彩な食材を堪能できます。おすすめは、少しユニークな創作寿司『黒胡椒香る とろ鯖と生ハムの創作押し寿司』です。舌の上でとろける鯖と、生ハムのハーモニーを黒胡椒でぴりっとしめた斬新な味わいとなっております。

同日より新たに2品のスイーツが登場

今年の春のデザートには新たに2品のスイーツがラインナップされています。北海道産クリームを配合してさらにおいしくなったクリームを使用し、プリンをもちっと生地でサンドした『生どらプリン』や、ふっくら粒々ゆで小豆が入った『生どら小豆黒蜜』。いま話題の”生どら”をお楽しみいただけます。

回転寿司業界の気になるトピックス

はま寿司の近況

売上の規模で回転寿司チェーンの「4強」や「四天王」と称されるトップ4の一角を占めながら、非上場企業のため頻繁に業績が開示されることのない「はま寿司」。最近の動向を伝える記事も少ないため、この「業界その他のトピックス」ゾーンで紹介します。

ゼンショーグループの「第二の柱」へ成長

すき家を運営するゼンショーを眺めると、実は牛丼の比率は36%とさらに多角化が進んでいます。ファミレスのココスとジョリーパスタもゼンショーグループですが、ゼンショーの場合特に目をひくのが回転寿司業界のはま寿司が、スシロー、くら寿司に次いで業界3位へと拡大している点です。すでにはま寿司はゼンショーグループの中でファミレス部門を抜いて、牛丼に次ぐ第二の柱へと成長しているのです。

昨年は「全国うまいもん祭」を第6弾まで開催

はま寿司は18年5月から、日本各地のご当地料理を複数回にわたって提供するキャンペーン「うまいもん祭」を始めた。5月から始めた第1弾では九州のご当地料理を用意。「博多とんこつラーメン」や「長崎焼きちゃんぽん」などを販売した。その後、第2弾~第5弾を実施し、続く12月からの第6弾では北海道のご当地料理を用意し、「釧路風北海魚介の塩ラーメン」や「じゃがバター いかの塩辛のせ」などを販売した。

牛丼の「松屋」が運営する回転寿司店が人気

牛丼チェーンで知られる「松屋」が経営する回転寿司「すし松」。都内と埼玉県内に数店舗あるだけですが、2016年にはアイテム情報誌「GetNavi」による「行列必至の人気寿司店ベスト5」で1位に選ばれるなど、人気のお店として知られています。
最近でも「しらべぇ」が取材に訪れて、「非常にウマい」「ぼっち回転寿司に最適」とレポートしています。

レアな魚が豊富でクジラも食べられる

すし松のメニューは種類数は少ないものの、コチやホウボウなど通好みの魚が豊富にあるのが特徴。290円のコチは身が締まっており、非常にウマい。
350円のクジラもしっとりした食感でなかなかの味。回転寿司でクジラを食べられるのは、都内でもほとんどないだろう。
全体の印象としては、駅ちかにあるためアクセスが良く、職人と喋らず黙々と寿司が食べられるため、ぼっち回転寿司に最適。
グルメ回転寿司だと職人と話すのが嫌で、100円回転寿司だとファミリーに会うのがキツいおひとりさまにベスト。1人回転寿司をするときには、ぜひ行ってみてほしい。

“回転”寿司なのに「回っている寿司」を取っていない!?

今年実施された調査では7割が「注文中心派」

最近ではタッチパネルで注文する店も増えたことに加え、「回っている寿司」は鮮度が落ちている気がするので、自分で注文するという人も多いのでは?
その現状を調べるべく、Jタウンネットが今年行った「回転寿司、レーンの寿司を取る? 取らない?」というアンケートの結果は…

「注文することが多いが、レーンの寿司を取ることもある」が50.7%(1050票)で過半数を占め、もっとも多い結果となった。
次いで、「取って食べることが多いが、注文することもある」が20.4%(422票)、「絶対に取らない」が20%(413票)、「基本的に取る。注文は極力しない」が8.9%(185票)と続いた。
「注文することが多い」「絶対に取らない」の2つを注文派とすると、その割合は70.7%に及ぶ。

「回っている寿司」を取る理由、取らない理由

この調査結果は複数のウェブメディアで取り上げられて波紋を呼び、さまざまな声が寄せられたとか。
まずは「回っている寿司を取る」派の声。

「(注文式は)注文しないと来ないし、時間掛かるしやっぱり、お寿司は回転してる方が良いんだよ。美味しそうで食べたいネタ取れるし」

次に「回っている寿司を取らない」「注文中心」派の声。

「回転してるネタって乾いてて不味そうじゃん」
「回転レーン上の寿司より注文した寿司のほうが適度に空気が入ってて美味かった」
「レーンの寿司は子どもがベタベタ触ってそう」
「 回っている寿司は絶対に食べない。他人の咳からの唾や手垢が付いているから」

店側が「回転しない寿司」路線に変更した理由とは?

「回転しない寿司」路線へ早めに舵を切って業績を伸ばした「元気寿司」の社長は、その理由についてインタビューで次のように答えています。

・全体の売り上げに占める注文率が8割を超えたこと
・回転レーンをストップした状態での運営をテストした結果、特に問題が発生しなかったこと
・既存店を回らない寿司に転換したところ、売り上げが伸びたこと

競争激化 経営会社の倒産が増加

人気の「回転寿司」だが、競争は激しさを増している。東京商工リサーチの調査によると、2018年1~7月の「寿司店」の倒産は18件(前年同期比12.5%増、前年同期16件)と前年同期を上回って推移している。
そのうち、「回転寿司店」を経営する会社の倒産は6件(前年同期1件)と急増しており、過去10年で最多だった16年の7件を上回る可能性が高い。

大手による寡占化も一因 5社でシェア75%

倒産が増えている背景には、漁獲量減少による魚価格の高騰や人手不足などが指摘されているほか、大手チェーンによる寡占化の弊害も一因になっているといいます。

「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」が「4強」「四天王」などと呼ばれ、「元気寿司」も加えた5社のシェアは約75%です。いかに寡占化が進んでいるかがわかると思います。残り約20~25%のシェアを地方・中小の回転寿司店が食い合っている構図です。昔は大手と中小がそれなりに共存していましたが、今は大手チェーンが地方チェーンをなぎ倒しているため、地方で倒産が増えています。

みんな何皿食べる?

業界ネタではないですが、気になるアンケート調査の記事があったので、最後に紹介しておきます。
その調査は、マルハニチロが今年3月に実施した「回転寿司に関する消費者実態調査」。今回で9回目という意外と歴史のある(?)調査です。

食べる量の平均は男性11.0皿、女性7.7皿

調査結果で気になったのは、回転寿司店で食べる量について。皆さん、何皿ぐらい食べているでしょうか?

寿司を何皿程度食べることが多いか聞いたところ、「5皿~9皿」(45.4%)や「10皿~14皿」(38.8%)に回答が集中。平均は9.3皿だった。男女別にみると、男性は平均11.0皿、女性は平均7.7皿で、男性の方が3.3皿多くなっている。
最高で何皿食べたことがあるかの問いには、「10皿~14皿」(34.0%)に最も多くの回答が集まり、平均は15.4皿。男女別にみると、男性は平均18.7皿、女性は平均12.1皿だった。

ちなみに金額で見ると、平均支払額は男性が1671円、女性は1314円という結果に。

そのほか、この調査では「回転寿司店選びの基準について」「回転寿司店の人気ネタランキング」「平成最後・ポスト平成に食べたい回転寿司」「回転寿司店のサイドメニューについて」などのテーマそれぞれで非常に多岐にわたる質問をし、その結果を発表しているので、興味がある方は調査結果を覗いてみては?