「日本の勝ち筋は計測にある」 東北大がノーベル賞・田中耕一氏と挑む「精度1000倍」の限界突破
ITmedia ビジネスオンライン / 2026年10月11日 19時16分
島津製作所の山本靖則社長(左)と東北大の冨永悌二総長
「日本の勝ち筋は、計測にある」
東北大学(仙台市)は10月1日、分析計測技術の高度化に向けた研究拠点「異分野融合計測イノベーションセンター」(CICMI/シクミ)を開設した。島津製作所(京都市)もCICMIに参画し、研究成果を社会実装していく。5年間の共同研究に取り組み、両者が計15億円を拠出する。
最大の目玉は、現在の「1000倍」もの精度を誇る質量分析技術の開発と、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏(島津製作所 エグゼクティブ・リサーチフェロー)が母校・東北大の国際卓越教授に就任したことだ。田中氏は学生への講義、学生・若手研究者への研究開発、ノウハウの助言をすることで次世代を育てる。
「引退前に、もうひと花咲かせたい」と語る67歳の田中氏が、次世代の若手とともに挑むのは、病気の超早期発見やグリーン領域に革命を起こす「見えないものを見る」技術の限界突破だ。経済安全保障を支える共通基盤にも位置付けられる「計測」を武器に、日本は世界の頂点に立てるのか。産学連携の枠を超えた、国力強化への挑戦が始まる。
●なぜ今、15億円を投じて「計測」なのか? 国家戦略としての意義
東北大の青葉山と星陵の両キャンパスに新設されたCICMI。なぜ今、東北大と島津製作所は巨費を投じて新たな拠点を築くのか。その背景には、計測技術が日本の「経済安全保障」を左右するという強烈な危機感と期待がある。
政府は高市政権下の7月に、AI・半導体、創薬・先端医療、防衛など官民で重点投資を進める「戦略17分野」を定めた。こうした先端技術の全ての基盤となるのが、この「計測」だ。今回CICMIは「ソフトレーザー脱離イオン化法」や「MEMS」(微小電気機械システム)の開発を目指す。
要するに「タンパク質などの重要な分子を壊さずに分析し、半導体技術を応用した超小型センサーによって病気の『超早期発見』を実現する技術」だ。医薬や食品、さらにはグリーン領域に至るまで、これまで見えなかったものを“見える化”することで、新たな産業を創出し、世界をリードする狙いがある。
●精度1000倍の破壊力 病気の「超早期発見」を可能に
日本には長年培ってきた「複雑なものを分離し、微量なものを検出し、同定する」という世界屈指の技術基盤がある。東北大の総合知と島津製作所の技術を結集し、この強みを極限まで伸ばそうというのが、CICMIの野心的な目標だ。
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