1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

電車内で心停止、「運が良かったで終わらせない」救われた命 当事者が明かす社会復帰の壁

産経ニュース / 2026年10月11日 18時36分

二度目の人生で「恩送り」を-。自動体外式除細動器(AED)で九死に一生を得た男性(63)が、社会復帰後の生活や救命活動を巡る悩みなどを共有しようと当事者団体を設立した。市民が救命に関与するケースは国内で年間1万件超に上る一方、強い負荷がかかることがある心理面などのサポート体制などは確立されていなかった。事例を集めて当事者や家族らに必要なケアを整理するとともに、AEDの普及にもつなげる。

「私のケースを運がよかったで終わらせず、救われる命を一つでも増やしたい」。会社員で日本AED財団(東京)の活動メンバーの一人、植村純一さん=横浜市=は話す。3年前に電車内で心臓発作を起こし、乗客らの救命活動で一命をとりとめた経験から団体設立に尽力してきた。

令和5年11月23日。祝日の電車内で突然、意識を失った。同じ車両に乗り合わせた看護師が、うめき声をあげる植村さんに気付き、運転士に異変を知らせた。そこから命のリレーが始まった。

看護師がその場で心臓マッサージを開始。次の駅では、運転士から報告を受けた駅員が待機していた。電車が駅に到着するや、偶然、その場に居合わせた非番の救急隊員らも加わり、駅設置のAEDでの電気ショックなどが行われ、心臓が再び動き出した。

救命活動にかかったのはわずか8分。植村さんは「鉄道会社が毎年、訓練をしていたこと、休日の医療従事者らが居合わせたことが迅速な対応につながった」と振り返る。

1カ月の入院を経て社会復帰できたが、短時間の外出でも体力を消耗して寝込んでしまう。次第に、将来に希望が見いだせなくなった。そんなとき、救命活動で助かった傷病者(サバイバー)や活動に関わった市民ら(バイスタンダー)との交流を通じて、それぞれの立場で経験に向き合っていることを知った。

サバイバーは、社会復帰後の生活に不安を抱えながらも命の恩人に感謝を伝えたい。一方でバイスタンダーには、生死を含む傷病者の容体は知らされず、自責の念に駆られたり、救命活動に関わったことを後悔したりする人もいる。

サバイバーの中には、一命を取りとめても重い後遺症が出るケースもあり、植村さん自身、現在も倒れる前の7割程度しか体力は戻っていない。

海外では、両者が体験を共有し、心理的な負担などを支え合う体制が整備されている。植村さんらはこうした実情を踏まえ、AED財団内に団体を設立。それぞれの経験や気持ちを共有するイベントを企画している。

「デリケートな内容だけに、伝える情報には慎重な判断が必要だ」と植村さん。その上で、「横のつながりで色々なケースを広く伝え、私のような事例が普通に起こる世の中にしたい」と意気込む。

こうした取り組みについて、医師で日本AED財団専務理事の石見拓・京都大教授(蘇生科学)は「医療の視点からは、傷病者が社会復帰できたことがゴールだった」と指摘。当事者やその家族、バイスタンダーの心のケアはこれまで十分に検討されてこなかったといい、「当事者が発信することは説得力がある」と期待を寄せた。

(小川恵理子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください